日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
フェノチアジンによる色素沈着の1例―マクロファージ,エクリン汗腺細胞に色素顆粒が認められた1例―
富沢 幸生小泉 洋子松村 哲理熊切 正信大河原 章
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 103 巻 8 号 p. 1083-

詳細
抄録

52歳,男性.精神分裂病のため1957年から入院加療中.入院時からフェノチアジン系薬剤を内服している.少なくとも8年前には顔面の色素沈着に気付かれている.初診時,顔面,両手背にスレート状の色調を帯びた褐色の色素沈着が認められた.HE染色で,真皮上層の血管周囲に,顆粒状で内部が無構造の,淡褐色色素の沈着がある.電顕による検索では,血管周囲のマクロファージの中に,直径数μまでの電子密度の高い顆粒状物質が貪食されていた.同様の顆粒はエクリン汗腺の分泌部に近い導管部にも認められた.エクリン汗腺分泌部に近い部の導管細胞内の顆粒は,マクロファージ内のものと比較して,電子密度が低かった.同顆粒のX線微量元素分析では,硫黄のピークがあり,フェノチアジン由来であることが示唆された.真皮深層にみられた顆粒は電子密度が低く,光顕的には色素顆粒としてとらえられず,日光照射によりフェノチアジンに化学的変化かおこり,電子密度の高い顆粒が形成されると考えられた.市立江別総合病院精神科解放病棟入院中の患者129名のうち,フェノチアジン系薬剤を内服している患者は54名で,その中でスレート状の異常色素沈着のある者は自験例を含めて2名であった.

著者関連情報
© 1993 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top