1994 年 104 巻 10 号 p. 1227-
皮膚腫瘍について市販の上皮系マーカーを用いてavidin-biotin complex(ABC)法による免疫組織化学的検討を行った.脂漏性角化症,Bowen病,老人性角化症,基底細胞腫,有棘細胞癌,毛包系腫瘍(5疾患),汗腺系腫瘍(8疾患)の各腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋切片を材料とした.用いた抗体は重層上皮型のkeratinSE(以下K-SE),単層上皮型のkeratinN-CL5D3(K-5D3)およびepithelial membrane antigen(EMA),carcinoembryonic antigen(CEA),S-100 protein(S-100)の5種類である.その結果,重層上皮型のK-SEはほとんどの上皮系腫瘍で陽性だが,細胞が未分化になるに従い弱陽性となり,基底細胞上皮腫では陰性であった.単層上皮型低分子ケラチンは,外毛根鞘性腫瘍の一部とエクリン系腫瘍の腺細胞に陽性であった.EMAは有棘細胞癌,外毛根鞘性腫瘍の透明細胞やエクリン汗腺系腫瘍に強く陽性だが,脂漏性角化症では陽性の度合が低かった.CEAは汗腺腫瘍における汗腺導管部に特異性の高い抗体である.以上のことより,良性,悪性および毛包付属器への分化を示す腫瘍の診断に免疫組織化学が有用と思われ,文献的な考察を含めて報告する.