日本皮膚科学会雑誌
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シクロスポリン内服療法中乾癬患者における腎生検所見
梅澤 慶紀大井 綱郎古賀 道之伊保谷 憲子吉田 雅治
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1998 年 108 巻 3 号 p. 243-

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抄録
乾癬のシクロスポリン(CYA)療法の重要な副作用の1つに腎障害がある.このため,CYAを投与した乾癬患者4名に腎生検を施行し組織学的に検討した.症例は47歳女性,58歳男性,56歳男性,45歳男性であり,CYA療法18ヵ月後,13ヵ月後,7週後,14ヵ月後に腎生検を施行した.組織学的には,いずれもCYAによる慢性腎障害の所見である,間質の縞状線維化と尿細管萎縮を標本上10~30%に認め,また全例で一部の腎糸球体の硬化像が見られた.この他にCYAに伴うとされる組織学的変化は,1例で細動脈に血管のムコイド様内膜肥厚が見られ,1例で傍糸球体装置の過形成が認められた.この2例では,血清クレアチニン(Cr)値の上昇を認めたが,CYA中止により改善が認められた.腎移植患者のCYA腎障害の組織学的検討を行った報告は多数あるが,乾癬患者におけるCYA腎障害の組織学的検討を行った報告は少ない.今回の検討で,CYA腎障害は機能的には可逆的であること,経過中の検査所見として血清Cr値,蛋白尿が指標として重要であること,危険因子として投与期間,併用薬,トラフレベル,個人の感受性の差など多因子があることを再確認した.
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© 1998 日本皮膚科学会
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