抄録
重症のツツガムシ病の1例を報告し,新潟県長岡赤十字病院において昭和63年から平成9年の10年間に治療を行ったツツガムシ病の20例を集計した.症例は83歳,女性.意識障害を伴う発熱で受診し,背部に黒色痂皮を付着する刺し口疹を認めた.播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation:DIC),急性腎不全,間質性肺炎を併発しており,塩酸ミノサイクリン,メシル酸ガベキサートの投与、血液透析,ステロイドパルス療法を施行した.長岡赤十字病院の過去の20例のうちDICスコアで6点以上のものは5例,うち2例で腎不全を合併し血液透析,血漿交換を行った.ツツガムシ病は,テトラサイクリン系の投与により劇的に軽快するが,治療が遅れるとDICを併発し重症化することがあるので注意が必要である.自験例は重症例であり,かつ救命し得た数少ない症例である.