日本皮膚科学会雑誌
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アトピー性皮膚炎の皮膚清浄度の指標としての皮膚pHの研究
遠藤 薫檜澤 孝之吹角 孝之片岡 葉子青木 敏之
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2000 年 110 巻 1 号 p. 19-

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抄録

(1)アトピー性皮膚炎患者38名と健常人18名に対して,踏み台昇降による発汗前後で肘窩及び前腕屈側中央の皮膚pHを測定し,さらに皮膚表面のS.aureus数を測定した.患者の皮膚pHは,健常人よりも高く,皮疹の悪化につれて上昇し,S.aureus数の増加とともに上昇していた.また発汗の少ない被験者で高い傾向が見られたが,発汗による有意な変化は認められなかった.(2)アトピー性皮膚炎患者125名と健常人76名に対して,日常の発汗の程度について問診し,肘窩,前腕屈側中央,頬部の中央,額部の中央の皮膚pHを測定した.健常人に対してはアレルギー疾患の既往の有無についても問診した.皮膚pHは,患者は健常人よりも高く,皮疹の悪化とともに上昇していた.さらに患者及び健常人とも,女性は男性より高く,肘窩,前腕・額部,頬部の順に高く,汗が少ないほど高くなっていた.またアレルギーの既往がある健常人はそれがない健常人より高くなっていた.以上の結果と皮疹の悪化につれてS.aureus数が増加することから,皮膚の健常性を表すものとして,皮膚pHと皮膚表面のS.aureus数より成る「皮膚清浄度」の概念を提唱した.皮膚清浄度から見ると,肘窩は高く,顔面は低く,女性は低く,汗の少ない部位や対象は低いと考えられる.成人型アトピー性皮膚炎の皮疹は皮膚清浄度の低い部位に一致して好発している.

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© 2000 日本皮膚科学会
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