日本皮膚科学会雑誌
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全身強皮症の肺線維症に対する血清KL-6および血清SP-Dの臨床的意義
大塚 俊
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2000 年 110 巻 11 号 p. 1699-

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抄録

獨協医科大学皮膚科に通院あるいは入院中の全身性強皮症(SSc)患者50例の肺線維症を評価する目的で,血清KL-6値および血清surfactant protein D(SP-D)値を測定した.ほぼ同時期に動脈血酸素分圧(PaO2),肺活量(%VC),拡散能(%Dlco)および肺CTを施行し,血清KL-6値,SP-D値との相関を検討した.さらにSScの病型や各種自己抗体についても検討を加えた.血清KL-6高値はSSc全体で10/50例(20.0%),limited cutaneous SSc(ISSc)では2/28例(7.1%),diffuse cutaneous SSc(dSSc)では8/22(36.4%)に,血清SP-D高値は全体で17/50倍(34.0%),ISScでは5/28例(17.9%),dSScでは12/22(54.5%)にみられた.病型別では血清KL-6値,SP-D値はいずれもISScに比べdSScで有意に高かった.血清KL-6値は,SP-D値を各々高値群,正常群に分けて検討したところ,%VC,%DLcoおよび肺CT重症度のいずれも血清KL-6値と相関することが明らかとなった.なお,血清SP-D値とは有意な相関はみられなかった.抗topoisomerase I抗体,抗centromere抗体および抗U1RNP抗体の各々の陽性群,陰性群の間で血清KL-6値,SP-D値について検討したところ,抗topoisomerase I抗体陽性群で血清KL-6値が高かった(p<0.01)が,他の抗体に関しては有意差は得られなかった.以上より,血清KL-6値は肺線維症を評価する上で非常に有用でしかも簡便なマーカーであり,血清SP-D値よりも優れていると考えた.

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