抄録
本人あるいは夫,または上の子にアトピー性疾患の既往を有する妊婦(母親)104人を母親の自由意志で,2群に分け,卵の厳しい制限(制限群46人)と緩やかな制限群(非制限群58人)のいずれかに参加してもらった.湿疹の検査は,生直後,生後4ヵ月,8ヵ月で行った.また,血中IgE抗体検査も同時期に(生直後は臍帯血)行った.出生後8ヵ月まで追跡できた母子86組(制限群35,非制限群51)につき,授乳期間中の卵除去と児の湿疹,喘鳴発症の有無,卵白および牛乳特異IgE抗体との相関を検討した.家族のアトピー背景因子では,卵制限群の母親にアレルギー性鼻炎の既往が若干多かった(p<0.05)以外に統計学的有意差は認められなかった.湿疹は生後8ヵ月までに制限群が35人中18人(51.4%),非制限群が51人中28人(54.9%),喘鳴は制限群に3人(8.6%),非制限群に3人(5.9%)認められたが,いずれも両群間に統計的有意差は認められなかった.各時期(4ヵ月,8ヵ月)における卵白および牛乳特異IgE抗体陽性率にも両群間に統計的有意差は認められなかった.