日本皮膚科学会雑誌
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生活環境中に存在するらい菌の疫学的意味―Polymerase chain reactionを用いたハンセン病濃厚流行地住民の鼻腔表面付着らい菌の検出―
佐伯 圭介Teky Budiawan松岡 正典和泉 眞藏
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2000 年 110 巻 2 号 p. 153-

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抄録

ハンセン病は,流行国においても多剤併用療法(multidrug therapy=MDT)が普及したため登録患者数は減少しているが,新患数は殆ど変化していない.われわれはこの理由を解明すべく,世界第3位のハンセン病流行国であるインドネシアにおいて,ハンセン病が多発するマルク州北マルク県の4ヵ村で皮膚科学的検診を行い,同時に①鼻腔表面からの塗抹標本(鼻腔スワブ)と②血清を採取し,併せて生活用水の水源を調査した.その結果,4ヵ村のいずれにも約4人に1人の健康住民の鼻腔かららい菌遺伝子が検出された.このことから,濃厚流行地では空気中にらい菌が存在して,それがらい菌の感染源となっている可能性が示唆された.ハンセン病制圧には現行の早期発見とMDTだけでは不充分で,発病危険者を事前に発見し予防投薬を行う等の新しい予防手段の開発が緊急の課題と思われる.

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© 2000 日本皮膚科学会
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