日本皮膚科学会雑誌
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原著
全身性強皮症の臨床像と特異抗体の関連―自験158例の検討―
秋元 幸子安部 正敏田村 敦志大西 一徳石川 治
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2001 年 111 巻 5 号 p. 827-836

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抄録
1991年から1999年に群馬大学皮膚科で経験したアメリカリウマチ協会の全身性強皮症診断基準案を満たし重複症候群を除く全身性強皮症(systemic sclerosis,SSc)158例を,抗核抗体のプロフィールおよび皮膚硬化の範囲を中心にdiffuse cutaneous SSc(dcSSc)とlimited cutaneous SSc(lcSSc)とに分類し,臨床所見を比較した.抗核抗体の陽性率は88.6%,抗セントロメア抗体(anticentromere antibody,ACA)陽性率は23.4%,抗DNAトポイソメラーゼI抗体(抗topoisomerase I抗体,抗Topo I抗体)陽性率は29.1%,抗U 1 RNP抗体陽性率は8.9%だった.病型ではdcSScが29.7%,lcSScは70.3%であった.抗Topo I抗体陽性例はdcSScであること,指尖瘢痕,手指の屈曲拘縮,肺線維症が,ACA陽性例はシェーグレン症候群合併,原発性胆汁性肝硬変合併,食道蠕動能低下がそれぞれ多くみとめられた.10年生存率,20年生存率は抗Topo I抗体陽性例が90.3%,56.0%,dcSScが88.3%,58.5%で特異抗体陰性例あるいはlcSScに比べ有意に低く,特異抗体に病型を加えた分類では抗Topo I抗体陽性dcSScの生存率が最も低かった(10年生存率:86.4%,20年生存率:42.3%).観察期間中に15例がSScに関連した病態で死亡し,死因では肺線維症に関連した心肺不全が60.0%と最も多かった(抗Topo I抗体陽性lcSScが2例,抗Topo I抗体陽性dcSScが3例,抗U 1 RNP陽性lcSScが2例,特異抗体陰性lcSScが2例).抗Topo I抗体陽性例はlcSSc,dcSScともに肺線維症罹患率が86.7%(13/15)および83.3%(25/30)と高く,肺線維症罹患例の中に肺活量が60.0%に低下した例がそれぞれ23.1%(3/13),13.0%(3/23)に認められた.特異抗体陰性lcSScは肺線維症罹患率は29.2%(14/48)と低いものの,肺線維症罹患例の中には肺活量が60.0%以下に低下している例が38.5%(5/13)と抗Topo I抗体陽性例よりも高率に認められた.特異抗体陰性dcSScは肺線維症罹患率は75.0%(9/12)と高率だったが,このうち肺活量が60.0%以下に低下している例は11.0%(1/9)と少なかった.肺病変を中心とした以上の解析から,1)SSc患者の予後を最も左右する肺線維症の罹患率は,dcSSc例または抗Topo I抗体陽性例で高い,2)抗Topo I抗体陽性dcSScはSSc関連の病態で死亡する率が最も高い,3)lcSScで肺線維症のある例は,抗Topo I抗体陽性例のみならず,抗U 1 RNP抗体陽性例あるいは特異抗体陰性例でも,肺病変が生命予後に影響を及ぼすことが少なくないと考えた.
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