日本皮膚科学会雑誌
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111 巻, 5 号
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生涯教育講座
  • 飯塚 一, 山本 明美, 高橋 英俊, 千秋 達雄
    原稿種別: 生涯教育講座
    2001 年 111 巻 5 号 p. 805-813
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    Peptidylarginine deiminase (PAD) (EC 3.5.3.15) catalyzes deimination of arginine residues in proteins in a calcium-ion-dependent manner , generating citrulline residues . The deiminated proteins show lowered isoelectric points, affecting protein interactions dependent on ionic charge. Stability of hydrogen bonds may also be disrupted. Substrate proteins of PAD in the epidermis include keratin K 1 and filaggrin, but not loricrin. Because keratin K 1 is assumed to be associated with filaggrin through ionic zipper interaction and with loricrin through velcro interaction, respectively, alteration of PAD-dependent protein deimination would have a significant biological effect on terminal differentiation of keratinocytes. Psoriatic hyperproliferative epidermis is characterized by decreased deiminated proteins, especially keratin K 1. Whether the finding is associated with a defect of PAD in the psoriatic hyperproliferative epidermis remains to be determined.
原著
  • 永井 秀之, 清原 祥夫, 中島 美智子, 土田 哲也
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 815-820
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    超音波パワードプラ法を用いて腫瘍内の血流信号の有無および状況を観察した.対象は,皮膚悪性腫瘍原発巣83症例94病巣(悪性黒色腫18症例18病巣,有棘細胞癌20症例23病巣,基底細胞癌18症例22病巣,Bowen病,Paget病など27症例31病巣),悪性黒色腫in-transit転移3症例14病巣,有棘細胞癌皮下転移2症例2病巣,直腸癌皮下転移1症例1病巣,転移のあるリンパ節22症例25病巣(悪性黒色腫11症例14病巣,有棘細胞癌3症例3病巣,外陰部Paget癌7症例7病巣,エクリン汗孔癌1症例1病巣),転移のないリンパ節26例26病巣および皮膚良性腫瘍109例109病巣であった.結果は皮膚悪性腫瘍では表皮内癌,表在型基底細胞癌を除く全症例の89%に血流信号がみられ,特に悪性黒色腫では,点状,線状あるいは樹枝状の豊富な血流信号が認められた.一方,皮膚良性腫瘍では,血流信号がみられたものは,全症例のうち4%であった.リンパ節では,転移があった例の92%に,転移のない例の8%に血流信号が認められた.非侵襲的,簡便な診断手技である超音波パワードプラ法は皮膚の良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別,および転移巣の診断に非常に有用であると考えた.とくに悪性黒色腫の画像診断として,診断的意義が高いと評価した.
  • 山本 洋子, 橋本 明彦, 冨樫 きょう子, 高塚 純子, 伊藤 明子, 志村 英樹, 伊藤 雅章
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 821-826
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.
  • 秋元 幸子, 安部 正敏, 田村 敦志, 大西 一徳, 石川 治
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 827-836
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    1991年から1999年に群馬大学皮膚科で経験したアメリカリウマチ協会の全身性強皮症診断基準案を満たし重複症候群を除く全身性強皮症(systemic sclerosis,SSc)158例を,抗核抗体のプロフィールおよび皮膚硬化の範囲を中心にdiffuse cutaneous SSc(dcSSc)とlimited cutaneous SSc(lcSSc)とに分類し,臨床所見を比較した.抗核抗体の陽性率は88.6%,抗セントロメア抗体(anticentromere antibody,ACA)陽性率は23.4%,抗DNAトポイソメラーゼI抗体(抗topoisomerase I抗体,抗Topo I抗体)陽性率は29.1%,抗U 1 RNP抗体陽性率は8.9%だった.病型ではdcSScが29.7%,lcSScは70.3%であった.抗Topo I抗体陽性例はdcSScであること,指尖瘢痕,手指の屈曲拘縮,肺線維症が,ACA陽性例はシェーグレン症候群合併,原発性胆汁性肝硬変合併,食道蠕動能低下がそれぞれ多くみとめられた.10年生存率,20年生存率は抗Topo I抗体陽性例が90.3%,56.0%,dcSScが88.3%,58.5%で特異抗体陰性例あるいはlcSScに比べ有意に低く,特異抗体に病型を加えた分類では抗Topo I抗体陽性dcSScの生存率が最も低かった(10年生存率:86.4%,20年生存率:42.3%).観察期間中に15例がSScに関連した病態で死亡し,死因では肺線維症に関連した心肺不全が60.0%と最も多かった(抗Topo I抗体陽性lcSScが2例,抗Topo I抗体陽性dcSScが3例,抗U 1 RNP陽性lcSScが2例,特異抗体陰性lcSScが2例).抗Topo I抗体陽性例はlcSSc,dcSScともに肺線維症罹患率が86.7%(13/15)および83.3%(25/30)と高く,肺線維症罹患例の中に肺活量が60.0%に低下した例がそれぞれ23.1%(3/13),13.0%(3/23)に認められた.特異抗体陰性lcSScは肺線維症罹患率は29.2%(14/48)と低いものの,肺線維症罹患例の中には肺活量が60.0%以下に低下している例が38.5%(5/13)と抗Topo I抗体陽性例よりも高率に認められた.特異抗体陰性dcSScは肺線維症罹患率は75.0%(9/12)と高率だったが,このうち肺活量が60.0%以下に低下している例は11.0%(1/9)と少なかった.肺病変を中心とした以上の解析から,1)SSc患者の予後を最も左右する肺線維症の罹患率は,dcSSc例または抗Topo I抗体陽性例で高い,2)抗Topo I抗体陽性dcSScはSSc関連の病態で死亡する率が最も高い,3)lcSScで肺線維症のある例は,抗Topo I抗体陽性例のみならず,抗U 1 RNP抗体陽性例あるいは特異抗体陰性例でも,肺病変が生命予後に影響を及ぼすことが少なくないと考えた.
  • 檜垣 祐子, 有川 順子, 吉原 伸子, 川本 恭子, 加茂 登志子, 堀川 直史, 川島 眞
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 837-842
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    入院中の重症AD患者100例を対象として,行動異常としての嗜癖的掻破行動の存在と,それに対する患者の自覚,自覚の有無による皮膚症状の予後の違いについて検討するとともに,コンサルテーション・リエゾン精神科医が面接し,ADの増悪に関与した心理社会的負荷について検討した.嗜癖的掻破行動は100例中87例と大多数に見られた.これらの患者のうちADの増悪に関与した心理社会的負荷の存在は,70例,80.5%と高率に認められた.その内容は家庭内の問題35.7%,職業上の問題34.3%などの日常的な負荷が主だった.嗜癖的掻破行動のあった87例の精神科主診断(DSM-IV)は「一般身体疾患に影響を与えている心理的要因」が63例,72.4%と最も多く,ついで「気分障害」(うつ病性障害など)が6例,6.9%だった.嗜癖的掻破行動のあった87例のうち,退院後6カ月以上通院した63例について,嗜癖的掻破行動の自覚と掻破行動の軽減,皮膚症状の経過について検討したところ,嗜癖的掻破行動を自覚できたのは47例,74.6%で,16例,25.4%は十分な自覚ができなかった.掻破行動の軽減したのは自覚できた47例で46.8%,自覚できない16例で31.3%と,自覚ができると掻破行動がより軽減した.皮膚症状の経過は,自覚できた47例で改善46.8%,やや改善44.7%,不変8.5%に対し,自覚できない16例で改善31.3%,やや改善が31.3%,不変37.5%で,自覚ができるとより高い改善を示した.これらの結果から,重症ADの大多数に嗜癖的掻破行動があり,日常的な心理社会的負荷により掻破行動が増強し,ADの増悪に関与していることが推察される.掻破行動の改善を1つの目標として,患者の自覚を高めることで長期的な症状改善が期待できると考えた.
  • 古谷 喜義, 真田 聖子, 数田 泰治, 森本 謙一, 信藤 肇, 坪井 賢朗
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 843-848
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性.初診約3カ月前から右側腹部に大豆大の紅斑が出現し,徐々に拡大.外用剤にて加療されたが改善傾向なく,当科紹介受診.右側腹部に母指頭大の浸潤を伴う紅斑を認めた.表在リンパ節は触知せず,全身症状は認めなかった.病理組織では真皮浅層から皮下脂肪織に結節状の細胞浸潤巣が認められた.細胞浸潤巣では,一部にリンパ濾胞様構造が認められ,monocytoid B細胞の形態を示すリンパ腫細胞がmarginal zoneに一致すると思われる領域から浸潤性に増生する像を示し,汗管内への浸潤像も認められた.またcentrocyte-like cellも増生しfollicular colonizationの像も認められた.増生する細胞はいずれもCD 79 a陽性,L-26陽性,IgM陽性,UCHL-1陰性,CD-3陰性,CD-5陰性,CD-10陰性,CD-23陰性だった.皮疹部組織のDNA遺伝子再構成では,免疫グロブリン遺伝子H鎖Jhにおいて多クローン性再構成が認められ,L鎖Cκにおいて単クローン性再構成が認められた.乾燥性角膜炎,抗SS-A抗体陽性,シルマーテスト陽性,口唇小唾液腺生検陽性を認めシェーグレン症候群を合併した皮膚原発marginal zone B-cell lymphoma of MALT typeと診断した.
  • 早川 雄次, 小森 一哉, 松永 剛, 芝田 敏勝
    原稿種別: 原著
    2001 年 111 巻 5 号 p. 849-854
    発行日: 2001/04/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    68歳女性.初診の12年前に子宮頸癌にて単純子宮全摘,両付属器切除し,術後60Coによる全骨盤照射50 Gyを行っている.初診時,外陰部に骨盤骨と癒着する比較的境界明瞭な,手拳大の腫瘍を認め,左殿部から大腿後面にかけても硬結を認めた.骨盤CTでは外陰部より骨盤底部の筋群に及ぶ広汎なlow densityの腫瘍を認め,右恥骨は腫瘍により取り囲まれていた.胸部CTにて両肺に多発性の2 cm大までの転移と思われるcoin lesionが認められた.病理組織学的所見は,核分裂像を高頻度に伴う未分化な腫瘍細胞が,密に増殖する部分と,間質に富み軟骨組織に類似する構築をとる部分の2相性の構造よりなり,間葉性軟骨肉腫と診断,骨盤CTの所見で,右恥骨が腫瘍により取り囲まれていたが,右恥骨には骨破壊像が認められず,骨盤底部の筋群を中心として腫瘍が存在する事から,同部位を原発とする骨外性間葉性軟骨肉腫が右恥骨まで浸潤したと考えた.放射線照射後に生じた間葉性軟骨肉腫の報告は,我々の検索しえた限りでは海外例を含めても1例のみときわめて稀である.
学会抄録
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