2001 年 111 巻 8 号 p. 1223-1228
同種造血幹細胞移植後の急性graft-versus-host disease(GVHD)において,皮膚生検による病理組織所見および組織学的重症度分類が,臨床的な重症度を反映する指標となり得るかどうかにつき検討した.新潟県立がんセンターにおいて,同種造血幹細胞移植後に皮膚生検により急性皮膚GVHDの診断がなされた16例を対象とした.病理組織所見として,表皮基底層の液状変性,表皮細胞の好酸性壊死,satellitosis,附属器上皮細胞の好酸性壊死,真皮上層のリンパ球浸潤の5項目につき評価し,急性GVHDの臨床的重症度分類および生命予後との関連につき統計学的に検討したところ,いずれの所見についても有意な関連はみられず,組織学的重症度分類と臨床的重症度分類との間にも有意な関連は認めなかった.同種造血幹細胞移植後のGVHDを適切なレベルで制御していくにあたっては,GVHDの重症度の評価,進行の予測が重要であるが,皮膚生検の結果はその指標にはなり得ないことが示された.