2002 年 112 巻 11 号 p. 1467-1473
旭川医科大学皮膚科及び関連施設を受診したマダニ刺咬症を6年間にわたり700例集積し,疫学的検討を試みた.マダニ虫体が残存した場合はマダニの種の同定および虫体のボレリア培養を施行し,マダニ虫体が残存しない場合は刺咬部皮膚を切除し,皮膚のボレリア培養を施行した.マダニ刺咬症は5~7月に集中し,6月が好発時期であった.刺咬部位は頭頸部が232例(34.8%)と最も多く,小児例では特に頭頸部が79.3%とさらに多く,罹患部位に偏りがみられた.マダニ種は366個体を同定し,そのうち303個体(81.6%)がIxodes persulcatus(IP:シュルツェマダニ)であった.培養できたIP 213個体中,26個体(12.2%)が有毒(ボレリア陽性)であった.マダニ刺咬症700例中56例(8.0%)にライム病が発症し,医療機関受診までの期間が20日に及ぶ症例群や,患者自身が受診前に不適切に処置した症例群にライム病発症率が高いことが統計学的に示された.