抄録
1990年から1999年の10年間に福島県立医大附属病院皮膚科を受診したベーチェット病患者35名(男性18名;女性17名)についての臨床的な検討を行った.病型では不全型が完全型に比べて有意に多く(不全型51.4%;完全型29.0%),これまでの全国統計とほぼ一致する結果であった.初発症状の出現率は男女ともにアフタ性口内炎が最も多く,かつ明らかな性差を認め(男性72%;女性41%),しかも経過中ほぼ全例に出現した(94%).また,約60%の症例でHLA-B51抗原が陽性であり,なかでも完全型では約70%と高頻度であったことは,従来の報告と同様に疾患特異性を強く示唆している.治療薬剤の変遷はNSAIDs,ステロイド剤,シクロスポリンを中心とする免疫抑制剤の投薬頻度が年々増加傾向にあった.特に長期間のステロイド内服は視力予後を不良にすることが知られているにも関わらず,眼病変を伴う症例においてその使用頻度が高かった.これは病勢を短期間に抑え,かつ多剤投与による副作用を極力回避するという考え方に基づいていると思われた.