日本皮膚科学会雑誌
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原著
養護施設で集団発症した成人麻疹の5例
大塚 俊彭 志中橋壁 道雄宮本 由香里山蔭 明生山﨑 雙次松野 明美
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2002 年 112 巻 3 号 p. 255-260

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抄録

養護施設で集団発生した成人麻疹の5例を経験した.いずれの症例も精神発達遅延などの基礎疾患があり,20年間以上も獨協医科大学近くの同じ養護施設に入所していた.5症例はほぼ同時期に発症し,いずれも入院加療にて良好な経過が得られた.当施設では平成11年に入所者全員(61名)の麻疹,風疹,ムンプスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスの各抗体価を予め測定していたため,早期に発症を予測でき診断の助けになった.当施設の入所者は全員成人であるが,各ウイルス抗体価の保有率は麻疹86.9%,風疹45.9%,ムンプス67.2%および水痘・帯状疱疹93.4%で,麻疹と風疹は一般成人に比較し低い傾向であった.その原因として,ワクチン未接種者が多いことや,養護施設では一般社会と隔離した環境にあり,感染機会が少ないことが考えられた.また,限られた環境で集団生活しているため,集団発生の危険があり注意を要する.今回の経験から他の同様の施設においても,各ウイルス抗体価のスクリーニングが必要と思われた.

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© 2002 日本皮膚科学会
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