日本皮膚科学会雑誌
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原著
難治性天疱瘡に対する血漿交換療法の有用性に関する検討 抗デスモグレイン抗体価測定の臨床的意義について
岸本 和裕東條 理子尾山 徳孝古川 裕利中村 晃一郎金子 史男
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2002 年 112 巻 8 号 p. 1097-1105

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抄録
当科において血漿交換療法を施行した難治性重症天疱瘡患者3例についての臨床症状,治療,ELISAスコアの推移について解析し,血漿交換療法時における抗Dsg抗体価測定の臨床的意義を検討した.血漿交換を施行した全症例において,速やかな臨床症状の改善,ステロイド投与量の減量および寛解導入・維持が可能であり,天疱瘡に対する有効性が再確認された.また,臨床症状とDsg ELISAスコアは非常によく相関しており,再燃前にスコアの上昇を認めた.血漿交換療法後の抗Dsg抗体価の減少に伴って臨床症状は改善した.血漿交換療法2回(/週)ごとの抗Dsg抗体価の変動(施行前vs.施行後;平均値±標準偏差)は抗Dsg 3抗体:104.0±74.1 vs. 85.6±76.3(除去率:26.7±22.5%),抗Dsg 1抗体:91.5±51.2 vs. 74.2±43.2(除去率:21.0±15.1%)であった.一方,血漿交換療法を複数回(16~22回)施行した際の抗Dsg抗体価の変動(施行前vs.施行後;平均値±標準偏差)は抗Dsg 3抗体:157.9±48.3 vs. 67.2±45.7(p<0.05)(除去率:72.0±18.6%),抗Dsg 1抗体:147.9±67.5 vs. 42.7±50.8(p<0.05)(除去率:61.3±31.1%)と,複数回(16~22回)施行することにより有意に抗体価が減少していた.血漿交換療法の前後で抗Dsg抗体価の変動を測定することによりその効果を迅速に把握することができた.これらの結果より,難治性天疱瘡の血漿交換療法におけるDsg ELISAs測定の併用は,病因となる血中自己抗体除去の確認に加えて,病勢の把握,再燃の予測,迅速な治療方針の決定に極めて有用であると考えた.
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© 2002 日本皮膚科学会
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