抄録
炎症性(53例)と非炎症性(22例)類表皮嚢腫(75例)から,好気的,嫌気的に細菌培養を行い分離細菌を検討した.好気培養では炎症性,非炎症性いずれからもコアグラーゼ陰性ブドウ球菌とCorynebacterium spp.が主な分離菌であった.嫌気培養ではPeptostreptococcus,Propionibacterium,Veillonella,Prevotellaをはじめとする多くの菌が分離された.炎症性から明らかに優位に分離されたのはPropionibacterium acnes(P. acnes)であり,ついでグラム陰性球菌であった.分離前に何らかの抗菌薬による治療があった症例とない症例に分けても検討した.治療があった場合の方が好気性,嫌気性ともに分離菌は少なかったが,ほとんどの症例で菌は検出されており,治療の有無と炎症性,非炎症性との間にも相関はみられなかった.炎症性からP. acnesやある種の嫌気性グラム陰性球菌が優位に分離されたことは,一部の炎症性症例において,嫌気性常在菌のもつ何らかの炎症惹起因子の関与を示唆していると考えられた.