日本皮膚科学会雑誌
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皮膚科セミナリウム 第10回 角化症
魚鱗癬・魚鱗癬症候群
秋山 真志
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2006 年 116 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

外界の環境と対峙するヒト体表面のほとんどの部分は皮膚で占められている.したがって,皮膚の最も重要な機能は,人体の恒常性維持のため,外界に対するバリアとして働くことである.この皮膚のバリア機能にとって一番重要な部分は,角層である.魚鱗癬,および,魚鱗癬症候群のほとんどが,皮膚の角化,特に,角層のバリア機能に重要な蛋白をコードする遺伝子の異常によることが,近年,次第に明らかにされつつある.角層の構造のなかで,バリア機能にとって重要な要素には,角化細胞質内のケラチン溶解産物,cornified cell envelopeと呼ばれる厚くなった細胞膜,そして,角層細胞間脂肪層が挙げられる.実際に,水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は,ケラチン1,10の遺伝子変異が病因であり,また,葉状魚鱗癬のおよそ半数の症例と非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の少数の症例は,トランスグルタミナーゼ1遺伝子変異によるcornified cell envelope形成障害が病因である.さらに,我々の研究により,最重症型の魚鱗癬である道化師様魚鱗癬は,表皮細胞の脂質輸送蛋白ABCA12の高度の機能障害による角層細胞間脂肪層の形成不全によって発症することが明らかになった.本稿では,魚鱗癬,および,魚鱗癬症候群の臨床症状,発症のメカニズムについて,最新の知見を含めて,概説した.

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