全身性強皮症(SSc)発症約9年後に,myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)の出現に伴い,半月体形成性糸球体腎炎,多発単神経炎をそれぞれ合併した2例を報告した.症例は56歳女性および21歳女性.両患者とも,diffuse cutaneous SScであった.ANCA関連血管炎の合併と考え,プレドニゾロン内服に加え,シクロフォスファミド大量静注療法を行い,両症例とも血管炎症状に対して著効した.現在当科で経過観察中のSSc患者のうち,調べ得た21例中,本論文の2例のみMPO-ANCA陽性であった.本邦例を検討したところ,MPO-ANCA陽性となりやすいSScの臨床的特徴は,SSc発症後の罹病期間が長い症例(平均10年,0.5~30年)および抗topoisomerase I抗体陽性例(71%)であった.このような特徴を持つSSc症例の経過中に,正常血圧の腎機能低下,血痰,呼吸困難,紫斑などの症状がみられた場合には,ANCAを測定すべきであると考える.SSc患者にANCA関連血管炎が合併することは稀である.しかし,急速進行性糸球体腎炎や肺胞出血等の重篤な症状をきたすため,臨床上極めて重要な病態である.迅速な診断と早期からの強力な免疫抑制療法を要することから,強皮症診療上,常に留意すべき症候といえる.
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