2009 年 8 巻 4 号 p. 407-415
52歳,男性。初診8日前より発熱を来たし,右下顎部の腫脹と共に四肢,臀部に紫斑と血疱が生じて受診した。初診時体温37.9℃,白血球12,100/μl,CRP14.8mg/dlの所見より右下顎部の腫脹は蜂窩織炎と診断し,臨床所見と皮膚生検より四肢の皮疹はHenoch-Schönlein 紫斑病と診断した。抗生剤投与にて右下顎部蜂窩織炎は軽快したが,紫斑の新生が続くため,プレドニゾロン20mg/日の点滴を開始し,皮疹は軽快した。その後心窩部痛や血便が出現し,入院時の凝固第XIII因子活性が72%とやや低下していたことから,プレドニゾロンを40mg/日に増量し,ヒト血液凝固第XIII因子製剤を投与したが,血便は持続し,貧血と低蛋白血症が進行したため,プレドニゾロン60mg/日に増量した。症状が安定したため,プレドニゾロンを40mg/日に減量したところ,突然大量下血をおこして出血性ショックをきたした。直ちにステロイドパルス療法を施行しプレドニゾロンを60mg/日に増量したが症状は治まらず,単純血漿交換療法を施行したところ腹部症状は急速に軽快した。副腎皮質ステロイド剤に抵抗性な難治性の紫斑病性腸炎に対して血漿交換療法は有効な治療法と考えられた。