2006 年 116 巻 12 号 p. 1751-1756
色素細胞は,表皮基底層や毛母基に存在し,メラニン色素を周囲の角化細胞に渡すことにより皮膚や毛髪に色をつける役割を果たしている.近年,これらの色素細胞の発生や分化を支える源の細胞として色素幹細胞が同定された.色素幹細胞の維持機構の変異は体色異常の表現型を呈すことから,遺伝生物学的手法によって幹細胞制御に関わる分子を容易に同定できるという利点がある.色素幹細胞の維持機構に関する研究成果は,幹細胞基礎研究の発展に寄与するだけではなく,シミや白髪,メラノーマなど,色素細胞の制御機構の変異によって生じるさまざまな病態の原因を解明する手がかりを提供すると共に,それらの新たな治療戦略を生み出す可能性を秘めている.