日本皮膚科学会雑誌
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原著
長期経過を観察し得たlivedo reticularis with summer ulcerationの4例
中村 妙子川上 佳夫尾山 徳孝竹之下 秀雄中村 晃一郎金子 史男
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2006 年 116 巻 12 号 p. 1757-1763

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抄録

Livedo reticularis with summer ulcerationと診断した4例につき,長期間の治療および臨床経過を観察し得た.観察期間は2~15年(平均9年)で,4例中3例は女性であった(36~56歳,平均46.8歳).全例とも下腿に網状皮斑が先行し,初夏の気温上昇に伴って潰瘍が増悪した.皮膚病理組織では真皮浅層から皮下脂肪織にかけての血管閉塞像を特徴とするものの,症例によっては必ずしも典型的な組織像は示さなかった.また長期経過中に通年性の難治性潰瘍への移行や,抗リン脂質抗体症候群を併発した症例も見られた.治療にはステロイド剤や消炎鎮痛剤は投与せず,個々の症例によって抗血小板凝集薬,抗凝固薬,末梢血管拡張薬を併用することにより,4例中2例は夏季の潰瘍形成を予防し得た.Livedo reticularis with summer ulcerationは膠原病や血管炎,感染症などの全身性疾患の一症状として存在する可能性があり,経過中にこれら原疾患の症状が現れることも少なくない.また重症例では潰瘍や疼痛の遷延化,さらに局所感染を合併する可能性もあるため,診断および治療には長期の経過観察が必要である.一方でその病勢は季節的な観点から予測可能であることも多く,潰瘍形成の予防をも念頭に置いた包括的な治療が患者のQOL維持につながると考えた.

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© 2006 日本皮膚科学会
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