日本皮膚科学会雑誌
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原著
髄芽腫を生じた基底細胞母斑症候群の2例と本邦報告例の検討
山本 純照榎本 美生多田 英之宮川 幸子
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2006 年 116 巻 3 号 p. 303-310

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抄録

基底細胞母斑症候群は多発性基底細胞癌,顎囊胞,大脳鎌の石灰化,二分肋骨,掌蹠小陥凹,特有の顔貌などの外胚葉,中胚葉起源の器官に異常をきたす常染色体優性遺伝の稀な疾患である.今回我々は髄芽腫を生じた基底細胞母斑症候群の2例を経験した.症例1:18歳,男性.2歳時に歩行困難が出現し,頭部CTで髄芽腫を指摘され,腫瘍摘出術および放射線照射を受けた.2000年8月(16歳時)から頭部に淡褐色の小結節が多数生じ,2002年2月4日に当科を受診.小結節は病理組織学的に基底細胞癌と診断された.その他両眼解離,平坦な鼻根や両側手掌の小陥凹が認められた.頭部X線写真および頭部単純CTで大脳鎌の石灰化が認められ,皮膚症状およびその病理組織学的所見,大脳鎌の石灰化,幼児期の髄芽腫から本症と診断した.症例2:17歳,男性.父親が基底細胞母斑症候群と診断されている.2歳時に歩行困難が出現し,頭部CTで髄芽腫を指摘され,腫瘍摘出術および放射線照射を受けた.1999年(12歳時)から頭頸部に黒褐色小結節が少数生じた.2004年11月22日に当科を受診.小結節は病理組織学的に基底細胞癌と診断された.その他両側手掌の小陥凹,大脳鎌の石灰化,家族歴,幼児期の髄芽腫から本症と診断した.髄芽腫を生じた基底細胞母斑症候群の本邦報告例を検討した結果,基底細胞母斑症候群で生じる髄芽腫の平均発症年齢は2歳前後であり,一般の髄芽腫に比べて低年齢発症であること,男児にやや多い傾向があること,髄芽腫に対して行われた放射線治療の照射野に一致して多数の基底細胞癌が生じ,さらに放射線によると思われる髄膜腫が高率に発症しているなどの結論を得た.

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