2006 年 116 巻 8 号 p. 1161-1171
近年の生化学的・分子生物学的検討により,ほぼすべての自己免疫性水疱症の抗原物質はデスモソームとヘミデスモソームの構成蛋白であることが明らかとなった.古典的天疱瘡の抗原はデスモグレイン1および3であり,デスモグレイン相補性仮説(desmoglein compensation theory)により,尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡の病態が説明できるようになった.類天疱瘡には水疱性類天疱瘡と粘膜類天疱瘡がある.水疱性類天疱瘡の抗原はBP230とBP180であり,BP180のNC16 a部位に反応するIgG抗体が病原性を有していると考えられる.粘膜類天疱瘡の主要な抗原はBP180とラミニン5であり,BP180に反応する粘膜類天疱瘡ではBP180のC末端に反応することが示され,ラミニン5のエピトープも同様の部位に存在する可能性が示唆されている.今後の生化学的・分子生物学的検討により,各種の自己免疫性水疱症の病態がさらに明らかにされると思われる.