日本皮膚科学会雑誌
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116 巻, 8 号
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皮膚科セミナリウム 第16回 水疱症
  • 橋本 隆
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第16回 水疱症
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1161-1171
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    近年の生化学的・分子生物学的検討により,ほぼすべての自己免疫性水疱症の抗原物質はデスモソームとヘミデスモソームの構成蛋白であることが明らかとなった.古典的天疱瘡の抗原はデスモグレイン1および3であり,デスモグレイン相補性仮説(desmoglein compensation theory)により,尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡の病態が説明できるようになった.類天疱瘡には水疱性類天疱瘡と粘膜類天疱瘡がある.水疱性類天疱瘡の抗原はBP230とBP180であり,BP180のNC16 a部位に反応するIgG抗体が病原性を有していると考えられる.粘膜類天疱瘡の主要な抗原はBP180とラミニン5であり,BP180に反応する粘膜類天疱瘡ではBP180のC末端に反応することが示され,ラミニン5のエピトープも同様の部位に存在する可能性が示唆されている.今後の生化学的・分子生物学的検討により,各種の自己免疫性水疱症の病態がさらに明らかにされると思われる.
  • 澤村 大輔
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第16回 水疱症
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1173-1176
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    軽微な外力により皮膚,粘膜に水疱,びらんを生ずる表皮水疱症は,単純型,接合部型,栄養障害型の3型に大きく分類され,近年の分子生物学の進歩により,10の原因遺伝子が同定された.それらの遺伝子がコードする蛋白は,すべて,表皮真皮基底膜部を構成する構造蛋白であることも明らかにされた.本稿では,本疾患の病型,亜型,原因蛋白・遺伝子,基本的遺伝形式と変異などについて,概説した.
原著
  • 川名 誠司
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1177-1185
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    最近,筆者らを含めた複数の研究者により,皮膚がcorticotropin-releasing factor(CRF)およびproopiomelanocortin(POMC)ペプチドと,それぞれに対応するCRF受容体(CRF-R),メラノコルチン受容体を発現していることが証明された.培養ケラチノサイト,メラノサイト,線維芽細胞では,紫外線照射や炎症性サイトカイン投与でCRF,POMC遺伝子の発現が増加し,さらにこれらの細胞にCRFを添加するとPOMCペプチドならびにコルチコステロイドの産生が有意に高まることも観察された.また,ヒトおよび動物の全身皮膚に紫外線を照射すると血液中のPOMCペプチドが急激に増加することも確認された.これらの所見をもとに,皮膚には視床下部・下垂体・副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis:HPA axis)と同等のCRF―CRF-R―POMC反応系が存在し,皮膚に直接加わった局所性ストレス(外傷,紫外線,感染など)に対し皮膚独自のストレス応答システムを司っているとの概念が確立しつつある.最近,我々は全身性ストレス(フットショックストレスと精神ストレス)を動物に負荷すると,CRFの作用を介してラットの接触皮膚炎が増悪し,あるいはマウス毛周期の休止期が延長しそれに続く成長期の誘導が顕著に遅延することを証明した.以上のように,皮膚は局所的ストレッサーならびに全身性ストレッサーに対し皮膚CRF―CRF-R―POMC系を介したストレス応答機構を有し,生体の恒常性維持に関与しており,このストレス応答系の破綻は疾病の発症につながると考える.
  • 西澤 綾, 山崎 直也, 山本 明史, 岩田 浩明, 高橋 聡, 石原 一之
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1187-1193
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫は抗がん剤や放射線治療に対する感受性の低い腫瘍であるため,転移巣に対する治療は非常に困難であるが,肺転移については根治性を考慮した手術適応も提案されている.当院では1984年から2003年までの過去20年間で,18例の悪性黒色腫肺転移切除例を経験しており,これらと遠隔転移部位が肺のみで手術を施行していない症例と比較したところ,肺転移巣完全切除例においては生存期間の中央値の延長がみられた.悪性黒色腫の遠隔転移部位が肺のみで,完全切除が可能である症例においては,転移巣の数が4個未満で,転移が出現するまでの無病期間が12カ月以上であれば,両側の肺転移に対しても積極的に手術を施行すべきと思われた.また,肺転移巣の手術適応については,肺転移出現後に3カ月以上経過をおいて腫瘍の成長をみることも重要な項目のひとつと考えられた.
  • 遠山 友紀子, 渡辺 大輔, 河田 守弘, 朝岡 昭子, 水谷 建太郎, 玉田 康彦, 松本 義也
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1195-1200
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    38歳,男性.咽頭痛の後,全身に浮腫性紅斑及び丘疹が出現し,一部は虹彩様の紅斑を呈した.多型滲出性紅斑と診断し,セフェム系抗生剤及びコルチコステロイド内服薬を投与されるも症状は軽快しなかった.約10日後,皮疹は鱗屑を伴う紅斑へと変化した.病理所見にて角層に好中球を伴った錯角化および真皮乳頭層の血管拡張がみられ,乾癬の初期像として矛盾しない所見であったため,最終的に滴状乾癬と診断した.内服PUVA療法を施行したところ,皮疹は約2カ月後に治癒した.最初の浮腫性紅斑は乾癬の初期疹であったと考えた.
  • 並川 健二郎, 山﨑 直也, 山本 明史, 吉野 公二, 吉田 寿斗志, 安藤 瑞生, 浅井 昌大, 大山 和一郎
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 8 号 p. 1201-1206
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    頭頸部領域原発の皮膚悪性腫瘍における頸部郭清術について,その郭清範囲や方法を具体的に記したガイドラインは存在しない.そこで,当院における皮膚悪性黒色腫の頸部郭清術を提示し,自験例をもとに郭清範囲,方法について検討した.現在当院では,明らかな進行例を除き選択的頸部郭清術を行っている.当院における原発部位別の郭清範囲を提示し,1984年1月~2003年12月までの20年間に当院を初診し頸部郭清術もしくは頸部センチネルリンパ節生検術を行った頭頸部皮膚原発悪性黒色腫患者24例について検討した.当院における原発部位別の郭清範囲について,現時点では適切と考えられるが,今後は症例の蓄積とともに再度評価および修正が必要となるであろう.また選択的頸部郭清術について,悪性腫瘍の種類や進行度に応じた郭清範囲や適応基準の確立が今後の課題である.
学会抄録
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