日本皮膚科学会雑誌
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皮膚科セミナリウム 第36回 神経皮膚症候群
結節性硬化症
大野 耕策
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2008 年 118 巻 5 号 p. 905-909

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抄録

結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex,TSC)はTSC1(Hamartinをコード)とTSC2(Tuberinをコード)の2つの原因遺伝子の欠陥によって発症する常染色体優性遺伝性疾患である.顔面の血管線維腫,知的障害,てんかんを主要症状とするが,症状の個人差が大きく,知的障害やてんかんがなく,皮膚症状だけの場合も多い.新生児期には心臓の腫瘍で診断されることもある.小児期はてんかん,知的障害,脳腫瘍などの神経症状による問題が多い.思春期~成人期では,顔面の血管線維腫,爪周囲の線維腫などの皮膚症状が問題となる.また腎臓の血管平滑筋脂肪腫の頻度が高く,無症状に進行し出血や腎不全で気づかれることが多い.肺のリンパ血管平滑筋腫症は女性に多く,生命予後が不良である.TSC1遺伝子変異による場合とTSC2遺伝子変異による場合で,明らかな症状の違いはなく,この2つの遺伝子産物は複合体として働き,細胞の増殖,細胞分化に重要な役割をしている可能性が示唆されている.

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© 2008 日本皮膚科学会
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