札幌皮膚病理研究所で病理診断した検体のうち,良性色素細胞性病変,つまり色素細胞母斑と臨床診断されていた13,594検体について,その病理診断を検討した.男性3,497検体(25.7%),女性10,097検体(74.3%)であり,切除時平均年齢は38.7±17.1歳であった.病変部位で最も多かったのが,顔面7,308検体(53.8%)であり,切除時年齢は,顔面が42.2±16.3歳と最も高く,下肢が,31.5±17.4歳と最も低かった.臨床診断と病理診断が一致したのは,13,594検体中11,840検体(87.1%)であった.色素細胞母斑以外と病理診断された例は,対象症例全体に対して,良性上皮性腫瘍が8.6%,良性非上皮性腫瘍が2.4%,炎症などが0.6%,そして悪性腫瘍が1.3%であった.良性上皮性腫瘍の中では,脂漏性角化症がもっとも多かった.悪性腫瘍では,基底細胞癌が最も多く,全体の0.9%であった.上皮内悪性黒色腫は16検体(0.1%),進行期悪性黒色腫は13検体(0.1%)あった.部位別の臨床診断と病理診断の一致率は,下肢で92.3%ともっとも高く,次いで顔面の89.2%であった.もっとも一致率が低かったのは頸部の78.2%,次いで躯幹の79.1%であった.悪性腫瘍は,顔面で多く,ついで,被髪頭部および上肢でその割合が高かった.切除時年齢は,良性色素細胞性病変が36.5±15.9歳と,非良性色素細胞性病変の53.3±18.1歳より,有意に低かった.以上の結果から,良性色素細胞性病変と臨床診断された病変でも,一定の確率で悪性病変が含まれているので,病理検査を行い,診断を確定する必要があると考えた.
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