抄録
60歳男性.約10年前から左臀部に小豆大の結節が出現し,徐々に増大した.初診時13×11×4cm大,広基性の,中心部に陥凹伴う紅色腫瘤を認めた.病理組織学的に同一腫瘍内に多彩な組織像が見られ,大きく3つのパターンに分けられた.腫瘍辺縁部は大型で淡明な細胞(clear cell)がみられたが,腫瘍塊の中央部に移行するにつれ,腫瘍細胞の配列は島状から索状へと変化した.個々の腫瘍細胞の異型度は増し,間質への浸潤傾向を伺わせた.免疫組織化学染色を試行し,組織像の変化と併行するようにサイトケラチン(CK)の発現に腫瘍部位によって相異が認められた.特定の方向への分化は認めず,部位による分化度の違いが,組織像と共に,CK発現の違いとして現れたと考えた.