日本皮膚科学会雑誌
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原著
Poroid cell neoplasms 421例の臨床病理学的検討 第4報:病理組織学的随伴所見
伊東 慶悟安齋 眞一木村 鉄宣
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2009 年 119 巻 2 号 p. 173-182

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抄録

札幌皮膚病理研究所で,Pinkus型(eccrine poroma,以下P),Smith-Coburn型(hidroacanthoma simplex,以下S),Winkelmann-McLeod型(dermal duct tumor,以下W),Mayer型(hidradenoma,以下M)と診断したporoid cell neoplasms 1,225検体中,病理標本が再検討できた421例の病理組織標本を用いて,以下のような病理組織学的随伴所見に関して検討した.bowenoid changeは46例(10.9%)で観察され,悪性所見の可能性もあり,存在する腫瘍内での部位と範囲が判断に重要である.この所見のある例は,統計学的に有意に病変の大きさが大きかった.頭頸部発生と皮内の比率が高く,Sが少ない.塊状壊死像は143例(34.0%)にあり,脂漏性角化症との鑑別上重要である.この所見がある例は,有意に切除時年齢が高く,病変が大きかった.主にporoid cellよりなる例は98例(23.3%)あり,そうである例は有意に病変の大きさが小さかった.よって,poroid cell neoplasmは,早期にはporoid cellが主体である可能性があると考えた.主にporoid cellよりなる例は,臨床形態ではドーム状で,組織亜型ではSが多い.腫瘍細胞の核の形態的特徴としてcoffee-bean様の縦溝が368例(87.4%),核内空胞が236例(56.1%)に観察され,脂漏性角化症との鑑別点になる可能性がある.pale cellは126例(29.9%)に存在した.poroid cellの細胞質が澄明になって形成されると考え,この所見のある例は有意に病変が大きかった.頭頸部発生例,臨床形態が皮下および皮内の例の割合が高く,組織亜型ではMに多かった.偽角質囊腫を伴う症例は119例(28.3%)あり,この所見がある例は有意に女性が多く,病変が大きかった.部位特異性はなく,組織亜型ではSが多かった.腫瘍細胞の細胞質内にメラニン顆粒を有する症例が114例(27.1%)存在し,メラニン顆粒の確認できない例に比べて,有意に病変が大きかった.部位および組織亜型に特異性はない.メラノサイトの増生がある例は125例(29.7%)あり,増生がない例に比べて,有意に女性が多く,病変が大きかった.組織亜型ではMの割合が少なかった.間質の浮腫性あるいは硝子様変化は124例(29.5%)に存在した.この所見がある例は有意に切除時年齢が高く,病変が大きかった.頭頸部発生例と臨床形態が有茎性の例の割合が高かった.

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