日本皮膚科学会雑誌
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119 巻, 2 号
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皮膚科セミナリウム 第46回 皮膚真菌症
  • 望月 隆
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第46回 皮膚真菌症
    2009 年 119 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    皮膚真菌症の診療では,抗真菌薬の使用に先立って真菌検査による診断の確定が必要である.真菌検査に用いる臨床検体は,活きのいい菌要素が,それも豊富に存在する場所はどこかを考えながら採取する.KOH直接鏡検法は皮膚科の検査の中で最も有用な検査法であり,皮膚科医は必ず習熟しておかねばならない.真菌培養法は,たとえ診断は白癬でも原因菌種によって患者への説明や予防対策が異なり,また深在性皮膚真菌症の診断には必須であるので,常に実施可能なように準備しておく必要がある.
  • 加藤 卓朗
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第46回 皮膚真菌症
    2009 年 119 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    室内環境で感染する足白癬は皮膚真菌症の中で最も多く,趾間型,小水疱型,角質増殖型に病型分類される.爪白癬は遠位部の爪甲下が肥厚する病型が多い.診断は直接鏡検で行い,原因菌はTrichophyton rubrumT. mentagrophytesが多い.イミダゾール系をはじめ複数の外用抗真菌薬があり,内服薬ではテルビナフィン塩酸塩とイトラコナゾールの有効性が高い.感染予防では患者の治療が最も重要である.
  • 坪井 良治
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第46回 皮膚真菌症
    2009 年 119 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    マラセチア(Malassezia)はヒトの皮膚に常在する脂質要求性の二形性真菌で,歴史的変遷を経て現在13菌種に分類されている.非培養法を用いた解析ではM. globosaM. restrictaが主要分離菌種である.マラセチアが関連する皮膚疾患としては,癜風,マラセチア毛包炎,脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎などが挙げられるが,最近の研究から,癜風やマラセチア毛包炎はマラセチア感染症といえるが,脂漏性皮膚炎はマラセチアが発症,増悪に深く関与した疾患であり,アトピー性皮膚炎においては特異IgE抗体が上昇し,増悪因子のひとつであると考えられる.新しい分類による各菌種の病態ならびに病原的意義は必ずしも明確になっていないので,今後さらに研究が必要である.
原著
  • 伊東 慶悟, 安齋 眞一, 木村 鉄宣
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 2 号 p. 173-182
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    札幌皮膚病理研究所で,Pinkus型(eccrine poroma,以下P),Smith-Coburn型(hidroacanthoma simplex,以下S),Winkelmann-McLeod型(dermal duct tumor,以下W),Mayer型(hidradenoma,以下M)と診断したporoid cell neoplasms 1,225検体中,病理標本が再検討できた421例の病理組織標本を用いて,以下のような病理組織学的随伴所見に関して検討した.bowenoid changeは46例(10.9%)で観察され,悪性所見の可能性もあり,存在する腫瘍内での部位と範囲が判断に重要である.この所見のある例は,統計学的に有意に病変の大きさが大きかった.頭頸部発生と皮内の比率が高く,Sが少ない.塊状壊死像は143例(34.0%)にあり,脂漏性角化症との鑑別上重要である.この所見がある例は,有意に切除時年齢が高く,病変が大きかった.主にporoid cellよりなる例は98例(23.3%)あり,そうである例は有意に病変の大きさが小さかった.よって,poroid cell neoplasmは,早期にはporoid cellが主体である可能性があると考えた.主にporoid cellよりなる例は,臨床形態ではドーム状で,組織亜型ではSが多い.腫瘍細胞の核の形態的特徴としてcoffee-bean様の縦溝が368例(87.4%),核内空胞が236例(56.1%)に観察され,脂漏性角化症との鑑別点になる可能性がある.pale cellは126例(29.9%)に存在した.poroid cellの細胞質が澄明になって形成されると考え,この所見のある例は有意に病変が大きかった.頭頸部発生例,臨床形態が皮下および皮内の例の割合が高く,組織亜型ではMに多かった.偽角質囊腫を伴う症例は119例(28.3%)あり,この所見がある例は有意に女性が多く,病変が大きかった.部位特異性はなく,組織亜型ではSが多かった.腫瘍細胞の細胞質内にメラニン顆粒を有する症例が114例(27.1%)存在し,メラニン顆粒の確認できない例に比べて,有意に病変が大きかった.部位および組織亜型に特異性はない.メラノサイトの増生がある例は125例(29.7%)あり,増生がない例に比べて,有意に女性が多く,病変が大きかった.組織亜型ではMの割合が少なかった.間質の浮腫性あるいは硝子様変化は124例(29.5%)に存在した.この所見がある例は有意に切除時年齢が高く,病変が大きかった.頭頸部発生例と臨床形態が有茎性の例の割合が高かった.
  • 福田 知雄
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    グロムス腫瘍は,指の爪下に好発する有痛性腫瘍としてよく知られている.グロムス腫瘍には単発性と多発性があるが,単発性は結合織性の被膜に包まれ,周囲との境界が明瞭であるという特徴を有している.その特徴を活かし,私は以前より,腫瘍が爪下に透見される本症の症例に対し,トレパンを用いたくり抜き手術を行ってきた.手順は,伝達麻酔下に腫瘍上の爪甲をトレパンで丸くくり抜き,その後,別のトレパンに換え腫瘍を中に押し込むようにゆっくり回す.最後に下床を形成剪刀で切り終了である.本法を行った43歳男性(右拇指),29歳男性(右示指),27歳女性(左中指)の3症例を代表例として提示する.術後の爪甲の変形は無いか,軽度であり,術中・術後の患者の苦痛も少なく,患者満足度は高い.通常の切除に比し,簡便かつ迅速に行える手技であり,推奨できる方法と考え報告する.
  • 井出 葉子, 皆川 茜, 古賀 弘志, 木庭 幸子, 河内 繁雄, 高田 実, 斎田 俊明, 内山 龍平, 八町 祐宏
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    67歳,男性,大工.初診の12年前より,顔面,頸部,両手背に苔癬化病変が出現した.臨床像より慢性光線過敏性皮膚炎と診断し,遮光および抗ヒスタミン剤の内服・副腎皮質ホルモン剤の外用にて加療していた.症状悪化時には入院させ遮光し,副腎皮質ホルモン軟膏と亜鉛華軟膏を重層すると数日で著明に改善するが,退院すると翌日から再燃した.光線テストで最小紅斑量の低下はなく,自宅での何らかの抗原曝露により発症している可能性を考えた.パッチテストを施行した結果,標準抗原の松脂および患者の作業場にあったエゾマツのおがくずに陽性を示した.直接おがくずに接触しなくても作業場にいるだけで症状が出現していることから,松脂によるairborne contact dermatitisと診断した.抗アレルギー剤の内服と副腎皮質ホルモン剤の外用を行い,作業時に肌を露出しないよう指導したところ,半年で苔癬化病変は消失した.
  • 藏岡 愛, 山岡 俊文, 竹中 基, 佐藤 伸一, 西本 勝太郎
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    52歳,男性.初診の20年前にバイクで転倒,左肘部に挫創を受傷し,縫合処置を受けた.初診の3年前に同部が腫張し,MRIで膿瘍が疑われ切除された.数カ月後に腫瘤・膿瘍が出現し,以後切除と再燃を繰り返していた.抗結核剤や抗真菌剤を内服するも効果なく,精査目的で2007年5月10日当科紹介受診となった.初診時,左肘外側の創痕周囲に一部に瘻孔を伴う不整形な腫瘤を数個と2 cm大の膿瘍を認めた.病理組織では内部にgrainを伴う膿瘍と周囲の肉芽腫を認め,培養でNocardia transvalensisを分離し,頭部・胸部CTではノカルジア症を示唆する所見はなく,菌腫型皮膚ノカルジア症と診断した.塩酸ミノサイクリン内服・点滴とスルファジアジン銀外用,温熱療法にて軽快した.
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