日本皮膚科学会雑誌
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原著
皮膚悪性腫瘍に対するMohs micrographic surgeryの手法を取り入れたmargin control法:double-blade法のまとめ
青柳 哲本間 英里奈秦 洋郎清水 宏
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2012 年 122 巻 14 号 p. 3739-3746

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抄録
再発のリスクが高率または切除範囲の決定に苦慮する皮膚悪性腫瘍40例(基底細胞癌:22例,有棘細胞癌:12例,皮膚原発粘液癌:3例,メルケル細胞癌:2例,脂腺癌:1例)に対して,既存の術中迅速診断のシステムを活かしつつ,Mohs micrographic surgeryのエッセンスを取り入れた手法(double-blade法)を用いて切除した治療成績をまとめて,その有用性を検討した.double-blade法を用い,初回の追加切除面に腫瘍細胞を認めたものは,40例中9例(22.5%)であった.各腫瘍における平均切除marginは,基底細胞癌では5.0±2.8 mm,有棘細胞癌では4.9±2.1 mm,皮膚原発粘液癌では5.7±2.3 mm,メルケル細胞癌では7±4.2 mm,脂腺癌(1例のみ)は7 mmであった.すべての症例で,観察期間内での局所再発は認めなかった.切除後の再建法では,皮弁術にて再建したのが29例(72.5%)と最多であった.基底細胞癌における2回目の追加切除の有無を部位別に検討した結果,基底細胞癌では鼻部発生例でのみ2回の追加切除の有無と相関を示した(p<0.05).また,①病変の部位,②病理組織型,③病変の最大径の各因子別に最終切除marginを比較した結果,病理組織型(morphea/infiltrative型vs micronodular/nodular型:7.1±3.6 mm vs 4±1.6 mm,p<0.01)でのみ有意差を認めた.double-blade法は,従来の切除方法を参考に切除marginを適切に設けて,さらにその周りを安全確認域として迅速診断することから,すべての切除面が陰性であることを確認するために用いる手法である.迅速性と確実性を併せ持つ手法として,局所再発のリスクが高い症例に対して,本邦における治療法の選択肢のひとつになり得ると考える.
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© 2012 日本皮膚科学会
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