日本皮膚科学会雑誌
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122 巻, 14 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
委員会報告
皮膚科セミナリウム 第92回 紫外線と皮膚
  • 上出 良一
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第92回 紫外線と皮膚
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3717-3723
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    光老化は紫外線による慢性皮膚障害で,加齢により生じる内因性あるいは自然老化とは異なる皮膚変化である.症状として露光部の色素沈着(日光黒子,光線性花弁状色素沈着),深い皺(表情筋による皺,項部菱形皮膚),頬部のたるみなどが見られる.機序はUVB,UVAにより角化細胞,線維芽細胞の細胞膜表面のEGF,IL-1,TNF-αなどの受容体が活性化され,細胞内のシグナル伝達系を介して転写因子AP-1を誘導し,matrixmetalloproteinase(MMP)の転写が亢進する.産生された蛋白分解酵素が真皮のコラーゲンやエラスチンを分解し,真皮は損傷を受ける.
  • 錦織 千佳子
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第92回 紫外線と皮膚
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3725-3730
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    紫外線(UV)が皮膚がんの原因となることは,動物実験,疫学調査などで明らかにされており,特に①幼児期に大量の日光にあたること,②間欠的な大量日光曝露が,紫外線発がんの危険因子といわれている.紫外線発がんは紫外線によって生じるDNAの傷とその修復機構のバランス,紫外線炎症の遷延,紫外線による免疫抑制の結果,前がん病変ががんに進展することを許容する宿主側の遺伝的背景など多様な側面が関わっている.紫外線発がんの過程は初期の病変も捉えやすく,発症機序,病態についての詳細な研究がなされており,発がんプロセスを考える上で一つのモデルとなる.
  • 森脇 真一
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第92回 紫外線と皮膚
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3733-3738
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    現在の皮膚科臨床の場において,光線療法は光線の様々な作用を引き出すことにより,種々の皮膚疾患を治療するための有用な手段のひとつである.歴史的,経験的知見から実践が始まった光線療法は,近年新しい機器の開発,作用機序の解明,有効性に関するエビデンスの蓄積など日々発展を続けている.一方で光線は「諸刃の剣」であり,治療として使用する場合の注意点も明らかになってきている.本稿では光線,特に紫外線療法に関する現在のコンセプトを最近の知見をまじえて言及する.
原著
  • 青柳 哲, 本間 英里奈, 秦 洋郎, 清水 宏
    原稿種別: 原著
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3739-3746
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    再発のリスクが高率または切除範囲の決定に苦慮する皮膚悪性腫瘍40例(基底細胞癌:22例,有棘細胞癌:12例,皮膚原発粘液癌:3例,メルケル細胞癌:2例,脂腺癌:1例)に対して,既存の術中迅速診断のシステムを活かしつつ,Mohs micrographic surgeryのエッセンスを取り入れた手法(double-blade法)を用いて切除した治療成績をまとめて,その有用性を検討した.double-blade法を用い,初回の追加切除面に腫瘍細胞を認めたものは,40例中9例(22.5%)であった.各腫瘍における平均切除marginは,基底細胞癌では5.0±2.8 mm,有棘細胞癌では4.9±2.1 mm,皮膚原発粘液癌では5.7±2.3 mm,メルケル細胞癌では7±4.2 mm,脂腺癌(1例のみ)は7 mmであった.すべての症例で,観察期間内での局所再発は認めなかった.切除後の再建法では,皮弁術にて再建したのが29例(72.5%)と最多であった.基底細胞癌における2回目の追加切除の有無を部位別に検討した結果,基底細胞癌では鼻部発生例でのみ2回の追加切除の有無と相関を示した(p<0.05).また,①病変の部位,②病理組織型,③病変の最大径の各因子別に最終切除marginを比較した結果,病理組織型(morphea/infiltrative型vs micronodular/nodular型:7.1±3.6 mm vs 4±1.6 mm,p<0.01)でのみ有意差を認めた.double-blade法は,従来の切除方法を参考に切除marginを適切に設けて,さらにその周りを安全確認域として迅速診断することから,すべての切除面が陰性であることを確認するために用いる手法である.迅速性と確実性を併せ持つ手法として,局所再発のリスクが高い症例に対して,本邦における治療法の選択肢のひとつになり得ると考える.
  • 小田 富美子, 村上 信司, 藤原 弘, 田村 達司郎, 江口 弘伸, 安元 慎一郎, 三石 剛, 佐山 浩二
    原稿種別: 原著
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3747-3753
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    54歳男性.2008年に成人T細胞白血病(ATL)急性型を発症し,化学療法で寛解,以後エトポシド内服で良好に経過していた.2010年1月頃より右腋窩に紅色局面が出現し,次第に増大した.また,四肢体幹にも赤色・褐色の局面が多発し次第に増大し,一部腫瘤を形成したため,ATLの皮膚浸潤を疑われ,2010年9月に当科を受診した.初診時,四肢体幹に大型で表面顆粒状の赤褐色腫瘤や局面が多発し,一部では潰瘍化していた.また,陰茎亀頭にも黒褐色の扁平小結節とびらんが多発していた.右大腿部の紅色局面からの生検では,著明な細胞異型やclumping cellを認めBowen病と診断した.その他の3カ所の腫瘤は浸潤癌であり,Bowen癌(squamous cell carcinoma;SCC)の診断で,四肢体幹,陰茎の病変部をすべて切除した.検討した3腫瘍全てからPCR法でヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus;HPV)DNAが検出され,DNAシークエンス解析でHPV 26型とHPV 67型と同定した.疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis;EV)の家族内発症はなくEVER1EVER2遺伝子の発現もなかった.ATLに伴う免疫低下によりHPVに対して易感染性が生じ,多発性にBowen病,Bowen癌を生じたと考えた.
  • 木村 聡子, 竹内 そら, 相馬 良直, 川上 民裕
    原稿種別: 原著
    2012 年 122 巻 14 号 p. 3755-3761
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/11/13
    ジャーナル 認証あり
    原発性Sjögren症候群は,皮膚血管病変を含んだ多彩な皮膚症状を呈し,抗リン脂質抗体を検出したという報告が散見される.我々は,原発性の皮膚血管炎(成人Henoch-Schönlein紫斑病や皮膚型結節性多発動脈炎)において,血中ループスアンチコアグラント(LAC)が陽性となり,抗カルジオリピン抗体(aCL),抗ホスファチジルセリン・プロトロンビン複合体抗体(aPSPT)の抗リン脂質抗体が上昇することを報告した.今回,当施設で皮膚血管病変を合併した原発性Sjögren症候群患者6症例を経験したので,血中LAC,aCL,抗β2-glycoprotein1抗体(aβ2GP1),aPSPTの抗リン脂質抗体を測定し,検討した.結果は6例中5例(83%)でLAC陽性,6例全例(100%)でaPSPT陽性そのうち5例(83%)はaPSPT IgMが陽性で,その平均値は19.4±5.9 U/ml(正常値は10 U/ml以下)と高値であった.対して,aCLとaβ2GP1は,1例のみが陽性を示した.蛍光抗体直接法では,施行した4例すべてで罹患皮膚血管病変にIgM沈着があった.以上から,原発性Sjögren症候群において,抗リン脂質抗体,特にaPSPTが何らかの関与を及ぼした場合,皮膚血管病変を発症する可能性が示唆された.
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