抄録
72歳男性.2年前から肺アスペルギローマに対しボリコナゾールを内服していた.1カ月前から左頬に隆起性皮膚腫瘍が出現し有棘細胞癌の診断で耳下腺合併切除,転移性耳下部リンパ節切除の後,放射線療法を行った.初診時,露光部のびまん性色素沈着や多発性褐色斑,角化性紅斑があり,紅斑の病理組織では表皮細胞の異常角化を認めた.ボリコナゾールを中止後,皮膚の色素沈着が退色し紅斑も消退した.近年本剤の光毒性と長期内服による皮膚有棘細胞癌の発症が海外で報告されており,皮膚科医が認識しておくべき重要な副作用と思われた.