日本皮膚科学会雑誌
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原著
歯周炎を有する掌蹠膿疱症患者の血清および唾液中のサイトカイン解析
村井 治千葉 俊美八重柏  隆
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2022 年 132 巻 8 号 p. 1849-1861

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抄録

掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:以下PPP)のリスク因子として成人の大多数が罹患している歯周炎の慢性炎症巣が関与している可能性が報告されている.今回,慢性炎症巣としての歯周炎とPPPの関係性を確認するため,PPP患者の皮疹状態と患者の歯周病の臨床症状及び血清・唾液中サイトカインの関連を検討した.歯周炎を有する10名のPPP患者,全身疾患を有しない歯周炎患者4名および23名の健常者の血液と唾液中のサイトカイン・ケモカインの測定を行った.また全ての対象者について歯周組織検査を実施し,口腔内における全ての測定部位に対する4 mm以上の病的な歯周ポケットが占める割合(Probing Pocket Depth:PPD≧4 mm)を,また歯周組織の炎症指標として,全ての測定部位に対する歯周ポケットからの出血を認めた部位の割合(Bleeding on Probing:BOP)ならびに歯周ポケットの炎症面積である歯周炎症表面積(Periodontal inflamed surface area:PISA)を測定した.PPP患者の皮疹状態については掌蹠膿疱症重症度指数(Palmoplantar Pustulosis Area and Severity Index:PPPASI)で判定した.その結果PPP患者の血清では健常者と比較してTNF-α,IL-17の有意な増加が認められた一方,歯周炎のみでPPPではない患者では上昇を認めたが有意差は無かった.また歯周炎を有するPPP患者においては,歯周組織の炎症を示すBOP(%)とPISA(mm2)が掌蹠膿疱症重症度指数および血清中のIL-6,IL-17と正の相関関係を示した.PPP患者では血清中の炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-17)が上昇し,特に歯周炎を有するPPP患者の歯周組織の炎症と炎症性サイトカイン(IL-6,IL-17)がPPPの病態に関与している可能性が示された.

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