2023 年 133 巻 12 号 p. 2805-2812
水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)は,ヘミデスモソーム構成タンパクであるBP180とBP230に対する自己抗体により真皮表皮境界部に水疱が形成される疾患である.多くのBP患者は抗BP180抗体とともに抗BP230抗体も陽性であるが,抗BP230抗体はepitope spreadingにより生じると考えられている.一方,臨床症状が軽度の抗BP230抗体のみ陽性のBPも存在しており,抗BP230抗体の産生機序ならびに病原性は不詳である.抗BP230抗体を有するBP230欠損マウスより脾臓細胞を採取,免疫不全マウスに移植したところ足,尾にびらん,痂皮などBP様皮膚症状が出現した.表皮下の裂隙形成,真皮表皮境界部へのIgGの沈着が認められ,BP230タンパクのみを標的とするBPの存在が示唆された.また,BPモデルマウスの皮膚に外傷を加えることで,高率なBP様症状の誘導ならびに臨床症状の悪化も確認され,外的要因によるBP発症の可能性が示された.