抄録
臨牀的に皮膚を詳細に観察しようとする場合,その性状の複雑さと,Variationの多いのに驚くとともに,往々にしてその記載に困難を感ずる.ましてこの性状を計測値として表現することは現状として殆ど不可能といつても過言ではあるまい.假りに,よく使われている「顔色」とか,「いろめ」という表現の意味する所を考えて見ても,その中には,血色の良し惡し,色の白黒,肌目の荒れ具合(表面の粗滑,疎密),濕い,光沢など順次に移行する無数の段階を示す因子が互いに組合されて含まれている.例えば單に色が黒いという表現の中にも,健康な感じ(小麥色,明るい褐色)から惡液質を思わせるドス黒い感じまでの無数の段階があり,白いという表現現の中にも餅肌といわれるもの,透き通るような肌合,或は白粉を附けたような表在性の白さもあるという具合である.そこで,皮膚の構造を考えて見ると,表層には無核のHornlamellenが幾層かあつて,中に空気も含まれる.2~3層の顆粒細胞の下には数層の棘細胞層があつて,その間にリンパ液が多く,共に透明体とはいゝ難い.これらは基底細胞層の色素によつて形成される暗黒の背景の前に位置しており,しかもこの背景は乳頭体の存在によつて波状となり,その間には毛細血管が入り,背景の色調に変化を與えている.いわば表皮は光学的にはtrubes Mediumを形成することにより,こゝで光線は散亂反射し(Ulphenomen nach Goethe-Brucke),背景の色調によつて色々の感じが表明されることになる.勿論この場合,顆粒層を重視する意見もあり(Unna),またその下層の有棘細胞層をも含めてTrubes Mediumをする人もあるが(小野),いずれにせよその厚さが皮膚の感じに影響することは間違いない.從つて皮膚に射入された光線がどの程度に皮内で散亂透過するかを知ることは,皮膚の透明さと名付けてよいかも知れないが,とにかく皮膚の1つの物理的性状を物語ることになる.そこで吾々は光線の皮内における散亂透過の程度(以下透光度という)を測定するため1つの装置を試作し,これを臨牀的に應用したので,その成績の大要を報告する.