1)エリテマトーデス(E.)の特に皮膚現象の発生に当つて皮膚素因をなす,或は局所的発生要約をなすものを求める目的でE.の主として慢性型症例と対照例とに施行した諸種皮膚反應,その他の結果として次のことを知つた.a)紫外線照射,フォルマリン,ヴァリダーゼ,トリプシリン皮内注射に依り惹起された炎症の持続日数はE.症例では対照例に於けるより明らかに長く,組織学的に観て血管並びに組織反に対照に於けるより強いものがある.b)紫外線照射試験に於てE.症例には対照に証明し難い表皮基底細胞の液状変性,対照に比してより強い基底膜の変形を認め,フォルマリン,ヴァリダーゼ及びトリプシリン反應に就てはE.症例に対照に比して是亦より強い膠原線維の変性が見られた.これ等諸反應の場合一定期間,一定強度の炎症が持続する際,臨床的,組織学研にE.本来の皮疹に一致する病変の発生,即ちKobner現象の発生を認め得た.c)アセチールコリン,アドレナリン反應も亦対照に於けるより軽度乍ら強く,毛細管抵抗値も対照に比し軽度低値を示すものがあり,即ち,皮膚血管機能には正常と異なるものがある.d)E.症例はヒスタミン,溶連菌菌体物質に対し対照に比しより強く反應する.亞急性,急性型では紫外線紅斑の持続日数が慢性型より更に長く,人工皮疹も一層生じ易い傾向があるが,他方アセチールコリン,ヒスタミン,フォルマリン等の即時反應は慢性型は勿論,対照例に於けるよりも弱く,斯菌反應型はHypo-或はAnergie狁態にあることを想わせる.毛細管抵抗は亞急性,急性型の全例に於て明らかに低下し,慢性型に比しても亦若干低下する.2)E.症例の臨床的事項を統計,観察した結果,慢性型皮疹の発生誘因として日光照射の他,循環障害,外傷等を重視すべきものと考える.3)急性,亞急性型の急性喚発期に血清抗ストレプトリジンO償の上昇を認めたが,慢性型にはこれを認めなかつた.4)Chloroquine服用によりE.症例に於ける各種皮膚反應は一般に減弱して対照例に於けるものに近ずく.然して対照例に於ても亦,Chloroquine服用に依つて各反應は一般に軽度乍ら減弱する傾向を示した.
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