日本皮膚科学会雑誌
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腋臭に就ての知見補遺
高見 弥太郎
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1960 年 70 巻 12 号 p. 1266-

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抄録

腋臭は極めてありふれた疾患であり,今日迄数多くの研究が行われ,特に我國に於ける業績が多い.その年令的,性別的,遺傳的関係,聤聹との関連は云う迄もなく,腋窩の組織学的所見等は殆ど解明し盡されていると云つてよい.然しながら一歩掘り下げて腋窩皮表の発汗乃至pH,或は腕窩分泌物の化学的組成,更には最近発展して来た組織化学的所見,又Shelley(1953)以来,注目されて来た細菌感染との関連等に就ては,二,三の記載はみられるが,未だ不明な点が多分に残されている.殊に文献を通覧して痛感されたことは,これら諸々の問題を実際に腋臭と非腋臭とに就て相互に系統的に比較檢討した文献は極めて寥々たるか或は殆ど見当らなかつたことである.そこで余は数年来,一方では小,中学,高校生に就てその統計的観察を行うと共に,他方では本学外来患者に就て肝,副腎皮質,性腺との関係,腋窩の発汗量並びに皮表pH,又paper chromatographyによる腋窩分泌物の低約脂肪酸を檢索し,更には腋窩apocrine腺の組織学的並びに組織化学的研究から腋窩分泌物乃至はglass micropipetteによる腋窩apocrine汗の細菌学的檢索に及び,併せて殺菌剤による腋臭の治療等を試みて来た.以下はこれらの成績をまとめたもので,何れも略々同年令の非腋臭を対照として腋臭と比較したのであるが,これにより,聊か新しい知見を加え得たので,以下記述しようと思う.因みに腋臭の定義は厳密にはむづかしい.生理的体臭との間にどこと線を引くかゞ困難だからであるが,余は便宜上,着衣の儘,密閉した室(20℃以上)に患者を暫時おき,腋窩を綿で拭つて,その臭を同僚3人で嗅ぎ一致して特有な惡臭の存在を肯定したもの以上を腋臭とし(+),腋窩を露出し普通の距離で対坐した丈で既に惡臭を感知し得たものを(廾),更により隔つた距離でも明かに惡臭を感知し得たものを(卅)とした.

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© 1960 日本皮膚科学会
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