抄録
1938年Sebrell,ButlerがはじめてビタミンB2(B2と略記する)欠乏の人体実験を行い,初発変化がしばしば,皮膚或いは粘膜に現われることを証して以来,皮膚疾患とB2との関係は諸家の注目する所となつた.勿論人体に於けるB2欠乏症即ちSebrellの謂うariboflavinosisに於て見られる各種の皮膚症状,例えば,脂漏性皮膚炎,痤瘡様発疹,落屑性変化,口角炎,口唇炎等はB2欠乏に特有とは限らず,健康と見做される対象でもしばしば,潜在性のB2欠乏の存在することが指摘されている.又,上記皮膚症状を有するものが,之を欠くものより血液B2量の低いことも既に明かにされているが,一般にB2単独の欠乏症は稀れとされており,所謂polyavitaminosis乃至B2 complex deficiency stateの概念で説明される場合が多い.特に津軽地方の自然発生的B3欠乏症として知られている所謂シビ・ガツチャキ症候群(シ・ガ症と略記する)に於てこの状態が著明とされている).一方,B2欠乏症を臨床的に論ずるに当つては食餌性,外因性の欠乏症よりもむしろ,体内に於ける利用障碍乃至活性型への転換障碍に基く内因性欠乏症が問題となり,肝,腎機能,自律神経,内分泌系等との関係が重視されている.現今,皮膚科領域に於けるB2の研究は必ずしも少しとしないが,B2欠乏と他種ビタミンとの相互関係に対する吟味が十分行われているとは未だ云い難い.よつて,余は今回主として血液各型B2量の測定を行うと共に一部症例に於ては尿総或いは血液ニコチン酸及びビタミンCの同時測定を行い,B2代謝の面より皮膚疾患の再検討を試み,併せて血液B2量の消長と2,3臨床検査成績,治療経過との関係を追及する機会があつたので,その成績について茲に報告する.