抄録
濕疹の病理解釋は今日依然皮膚科学の重要な問題をなしているが,廣義の濕疹類に属するものに所謂アトピー性皮膚炎atopic dermatitis(以下A.D.と略記)あり,このものはその知見近年本邦に於ても漸く豊富となつて来た観がある.併し乍らこのものを濕疹類中の爾餘疾患,特に通常の所謂真正湿疹から分離,独立させる根據にはなお十分なものがなく,これを確立させることは濕疹類病理の解明上にも極めて望ましい.廣く各種の皮膚疾患,そのうちでも湿疹類では従来もその皮膚病変の発生,展開に一定の皮膚素因Hautdiatheseの関與することが考えられているが,この皮膚素因の点でA.D.に如何なるものがあるかと通常湿疹の患者及び健常者との比較に於て明かにし,以て本症A.D.の特異性を知るとともに,廣く濕疹類の病理解釋に資するのが本篇の目的である.