脂肪腫は脂肪組織の良性の腫瘍であつて,脂肪細胞を構成の主要素とするが,その他に血管系要素及び結合織性成分も種々の割合に於てその構成に与つている.血管系要素の増殖が特に著明に認められる場合,これをangiolipoma,lipoma telangiectaticum等と呼んでいる.これまで脂肪腫に於ける血管系の態度については,余り諸家の注目を惹かなかつたものの如くangiolipomaに関する報告は少ない.しかし乍ら本症は,必ずしも稀なものではない様にも思われ,また屡々単に脂肪腫或いは線維脂肪腫として診断されている場合もある様に思われる.著者等は最近本症と思われる1例を経験したので,ここに報告し,同時に若干の文献的考察を加えてみたい.