日本皮膚科学会雑誌
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円形脱毛症の治療 特に各種薬剤治療の比較について
竹内 勝今井 利一麻生 和雄岡本 昭二小林 健正内海 滉斉藤 恭一竹内 達斉藤 総明米沢 照夫宮里 義弘
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1962 年 72 巻 1 号 p. 89-

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抄録
円形脱毛症(惡性円形脱毛症を含む)は皮膚科領域において,かなり重要な部門を占める1疾患であるが,その病因,ひいては治療の問題に関して,尚多くの未解決の諸点を残している.即ち,古く伝染説に始まる病因論は,爾後植物神経機能異常,新陳代謝障害,病巣感染アレルギー,内分泌障害,精神因子の介入,あるいはこれら諸因子の総和による症候群説などを考えるものがあるが,いづれも個々の症例に認められた事象を基盤とするもので,全症例に共通の病因は未だ明確ではない.従つて本症の治療もこれらの諸説の1~2にもとづいた治療法を専ら経験的に,或は慣習的に適用しているに過ぎないのが現状と思われる.更に,本症にとゞまらず,原因不明の疾患に対する薬剤治療の効果の判定,あるいは各種治療法の優劣の比較は常に慎重な検討を要し,得られた2,3の成績から結論を推定することは極めて危険な飛躍と言わざるを得ない.況んや,本症の如くその経過中に屡々症状の軽重とは無関係に自然治癒を営む疾患では,その発毛成果,あるいは予後を以て直ちに治療効果と断定する訳にはゆかない.従つて治療効果の判定には,症例の累積と,治効症例の採択に可及的に自然治癒を除外し得る如き一定の基準をおいて,その効果判定誤差を最少限度にとどめることが良策と考える.以下,我々は我教室において得られた各成績について記載し聊かの考按を試みたいと思う.
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© 1962 日本皮膚科学会
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