日本皮膚科学会雑誌
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Phacomatosis Pigmentovascularis Ota新病型の2例
戸田 浄
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1966 年 76 巻 2 号 p. 47-

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抄録

最近phacomatosis pigmentovascularis Otaと思われる2例を経験したのを機会に,同症について,文献的考察を試み,2,3の所見をのべて御批判を得たい.phacomatosis pigmentovascularis Otaは1947年,太田,川村,伊藤により,初めて命名報告された疾患で,皮膚血管腫と色素性母斑が併発,一定の病像を呈するものを,かくよんだが,故太田敎授らは在来の症例をまとめ,本症をさらに次の2病型に分類した.すなわち,疣状色素性母斑と単純性血管腫の併存するものをAdamson-Best型,青色母斑と単純性血管腫の併発するものを,高野-Kruger-土肥型と区別した.氏らはこれを敢えて,母斑症としたのは,van der Haeveに由来する母斑症の定義をさらに普遍して,皮膚に2種以上の母斑性病変が合併して,1つのまとまつた病像をつくるものを皮膚以外の病変の有無を問題とせず局所性母斑症と定義したためで,この観点にたつと本症,すなわち血管腫と色素性母斑の合併例が母斑症の範疇に入るからである.さらに,太田敎授らの報告2例についてみると,症例1ではKruger-土肥型の外にSturge-Weber症候群を,症例2では,Klippel-Weber症候群を合併している.これからみると,川村敎授が指摘しているように深部の病変が併存して,全身性母斑症とすべきものでありうることが十分に考えられる.そこで太田敎授らは,はじめこのような全身性母斑症とすべき症例を,本症の第3型,すなわち太田型として分類することを提案しておられる.その後,本症例を集め検討をつづけている川村敎授の1957年皮膚科全書の記載では,1)Adamson-Best型,2)高野-Kruger-土肥型の2型のみを分類し,第3型の存在については,その可能性について言及しているにとどまつている.いずれにしても,血管腫と合併する母斑の種類によつて,いろいろの組合せが考えられるが,たまたま,われわれが経験した2例は第1例は広範な赤酒様血管腫と扁平母斑の併存であり,第2例は広範な赤酒様血管腫と扁平母斑に加えるに,太田氏眼上顎部褐青色母斑及び異所性太田母斑,さらに貧血母斑の併発したもので,上記のいずれの分類にも適合せず,混在する母斑の種類によつて病型を分類するとすれば,新たに,第4型,小堀型とでもしてさらに分類する煩雑さが加わることになる.いずれにしても,本母斑症はいくつかの組合せがありうることを,ここに強調したい.

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© 1966 日本皮膚科学会
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