日本皮膚科学会雑誌
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Pseudoglandular Squamous Cell Carcinoma(Adeno-acanthoma)の1例
川村 太郎西脇 宗一森 俊二
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1966 年 76 巻 3 号 p. 153-

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抄録

Leverが1947年にadenoacanthoma of sweat glandsとして発表した腺上ないし管状の構造を形成する皮膚腫瘍は現在まで85例の報告を数える.最近では多くの報告者は本腫瘍を有棘細胞癌の1型であると考えているが,特徴的な腺ないし管腔様構造が果して腺様分化を意味するものであるかどうかについては議論のある所である.著者らは本邦で第3番目の報告例に当る.70才,女性の右額に生じた本例を経験し,その組織学的検索を行なつた.部位により典型的な本症の所見を示す所,老人性角化腫の典型像を示す部,また老人性角化腫の異形化した基底細胞がその裂隙形成性を保つたまま真皮中に伸びて腺状ないし管状の腫瘍塊を形成している所,さらに一見ケラトアカントーマを思わせる角質を入れた嚢腫状構造も見られた.なおacantholyticな表皮細胞の一部はPAS染色陽性で唾液消化に抵抗し,alcian blueにも陽性である.Patzelt上皮線維は,その染色性に著変はないが,数の減少や走行の乱れが認められる.

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© 1966 日本皮膚科学会
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