日本皮膚科学会雑誌
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小児乾燥型湿疹およびPrurigo Besnierの病理発生機序に関する一考察
滝沢 和彦
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1969 年 79 巻 5 号 p. 344-

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抄録

Sulzbergerらはアトピー性素因すなわち遺伝的にレアギンを産生しやすい個体に発生した湿疹病変に対してアトピー性皮膚炎の病名を付し,おそらくはアトピー型アレルギーの機序によつて発生するものであろうとした.Hill & Sulzbergerはアトピー性皮膚炎を乳児期,幼児期,成人期の3期に分けているが,本邦では乳児期のものに対してはアトピー性皮膚炎の名称を与えることに異論が多く,幼児期以降の身体屈面に特徴ある角化性苔癬化病巣を形成するものに対して,アトピー性皮膚炎と診断される場合が多い.しかしながらSulzbergerらが当初考えていたようなアトピー型アレルギーが湿疹群の成因に関与するという想定は,現今ではおおむね否定されつつある.Petersonらはagammaglobulinaemiaの患者にもアトピー性皮膚炎が少なからず発生したと述べ,Schnyderも吸入アレルゲンの皮内反応およびその家族歴から湿疹と呼吸器系アレルギー症候は分離できるとしている.これらの見解はアトピー性皮膚炎がアレルギー症状を合併しやすい事実があるにしても,アトピーなる名称を付し難い理由になつている.したがつてフランス,北欧ではアトピー性皮膚炎よりむしろprurigo Besnierが,またドイツではendogenes Ekzemやkonstitutionelle Neurodermatitisの名称が広く用いられている.本稿でも上述の理由により,原則としてprurigo Besnierの名称を用いた.Prurigo Besnierによくみられると記載されている毛孔性苔癬化丘疹が基本単位となり,これがときに集蔟性に存在し,局面性落屑性病巣を形成し,prurigo Besnierにみられる特徴的な屈面性苔癬化病巣を有さない疾患に対し,北村,高橋,笹川らは局面性苔癬状落屑性湿疹patchy pityriasiform lichenoid eczema(小児乾燥型湿疹-笹川5))と命名した.この小児乾燥型湿疹はprurigo Besnierに移行することが少なくなく,また喘息など

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