日本皮膚科学会雑誌
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79 巻, 5 号
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  • 青山 久, 安江 隆, 井沢 洋平, 小林 敏夫
    1969 年 79 巻 5 号 p. 317-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    慢性蕁麻疹患者の大部分は,抗ヒスタミン剤を適当に選択使用することによつて膨疹を一時的に抑制することが可能であるが,掻爬や圧迫などの物理的刺激が作用した場合にのみ発斑する人工蕁麻疹の患者においては,その機械的刺激による膨疹発生を抗ヒスタミン剤のみによつて抑制することは,困難な場合が多い.従来の報告を概読しても,抗ヒスタミン剤による人工蕁麻疹の膨疹抑制率は低いようである.例えば,北原の報告ではd-chlorpheniramine(Polaramine)を1日量18mg投与しても,人工蕁麻疹は5例中全例機械的刺激による膨疹発生を抑制できなかつたと述べている.我々の外来においても,大学病院の特殊性から,他医にて抗ヒスタミン剤を投与されて無効のために来院する患者が多いためもあるが,昨年から今年にかけて当科を訪れた人工蕁麻疹10例中d-chlorpheniramine1日量18mg投与にて,明らかにdermographia elevetaの発生抑制効果を認めたものは,わずか2例にすぎなかつた.現在まで,我々は人工蕁麻疹患者に種々の薬剤を投与して,治療効果を検討してきたが,一般に慣用されている抗ヒスタミン剤の奏効があまり期待できない本症に対して,いかなる薬剤を使用すべきであるかを確かめてみる必要を感じ,今回の実験を行なつた.現在,人工蕁麻疹の発生機序としては,図1のように考えているものが多い.キニン系については,Winkelmannの仕事がある.即ちtetrahydrofurfuryl nicotinateを外用すると,dermographismは正常人にても容易に発生し,出来た膨疹部に針をさし,集めた液の中には,ヒスタミン活性はなくて,キニン活性があり,その膨疹形成は,procaine,atropine,cortisone,diphengydramine,compound 48/80にては抑制されず,aspirinがこれを抑制したと報告している.マスト細胞―ヒスタミン系については,数多くの研究がある.ラットの背部に強くデルモグラフィーを行ない,その部皮膚のマスト細胞の態度を経時的に観察すると,5分後において,その大半は脱顆粒し,15分,30分と経過するにしたがつて,次第に正常マストの形態が回復して来る.人体においても,人工蕁麻疹患者にデルモグラフィーを行ない,発生した膨疹が殆んど消退した後,さらに,さきの線状膨疹痕に交叉するように再びデルモグラフィーを行なうと,その交叉部においては,人工蕁麻疹は生じにくい.また,テンプラ摂取により容易に蕁麻疹をおこす患者の胸部にデルモグラフィーを行
  • 菅原 宏
    1969 年 79 巻 5 号 p. 322-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    1926年Goldbergらはvitamin B群中から耐熱性因子を見出し,vitamin B2(以下B2と略す)と名づけ,1933年Kuhnらがこれをovaflavinとして純化している.このB2は,発見頭初以来成長促進因子・抗皮膚炎因子として考えられ,皮膚科領域からの注目を惹いた.1938年SebrellおよびButlerは,人体B2欠乏実験を行ない,欠乏時に口角糜爛・口唇発赤・舌炎を生じ,B2投与により完治する症状群を認めてariboflavinosisと称した.1940年Seydenstrickerはこれに角膜周擁充血・角膜脈管新生の眼症状を追加した.本邦においても,1948年中川,安田らが人体欠乏実験を行ない,眼所見・舌炎・口唇炎・口角炎・咽頭炎・皮膚乾燥・鼻翼脂漏性皮膚炎・陰嚢皮膚炎などの諸症状を認め,実験的にヒトのariboflavinosisを確立した.さらに増田が青森県津軽地方の「シビガッチャキ」と称せられる地方病が自然に存在するariboflavinosisであることを血中B2の定量,ならびに治療成績から証明した.その後,ビタミンB2に関する栄養学的効果,酵素学的意義,生体内合成,光学的作用,トリプトファン代謝との関係など,各方面にわたる進歩は著るしいものがある.
  • 番場 秀和
    1969 年 79 巻 5 号 p. 337-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    メラニン研究の黎明期におけるRothman一派の仮説,すなわちメラノサイト中にtyrosineとtyrosinaseおよびtyrosinase inhibitorであるSH基が共存し,SH基を減少させる紫外線,レ線照射あるいは炎症性変化などが加わつた場合に,tyrosine-tyrosinase反応が進行してメラニンが生成されるとする模式的な説明は画期的なものであつた.その後,この問題に関し多くの研究が追加されたが,これらの実験成績は細部では矛盾し,SH基がメラニン形成になんらかの形で関与するという基本的な事実をのぞけば,いまだに統一的な見解は得られていない.最近,曽根らはFRによるglutathion(以下GSH)の光酸化増感作用を認め,その作用はflavin(以下FR)のほかにflavine mononucleotide(以下FMN),lumiflavin(以下LF)にも存在することを証明した.また共同研究者の菅原は各種動物の皮膚riboflavin(以下B2)を測定し,ヒトの皮膚には平均1.8μg/gのB2が存し,その約17%はFRであること,また皮膚総B2の約40%が表皮にあること,また陰嚢・包皮・腋窩などのメラニンの多い部位は,メラニンの少ない側腹部・下腿などにくらべて2~3倍のB2を含んでいること,FR-14C投与後のダイコクネズミ皮膚でFRからflavine adenine dinucleotide(以下FAD),FMNが生成されるが酵素作用を持たないFRが投与7日後の皮膚にも存在することなどを見出した.以上の事実からB2はFAD,FMNとして酸化的燐酸化の役割を果す以外に,曽根らが指摘したようなB2のSH基光酸化増感作用が皮膚でも起り,角質およびメラニン形成に影響を及ぼしていることが推定される.
  • 滝沢 和彦
    1969 年 79 巻 5 号 p. 344-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    Sulzbergerらはアトピー性素因すなわち遺伝的にレアギンを産生しやすい個体に発生した湿疹病変に対してアトピー性皮膚炎の病名を付し,おそらくはアトピー型アレルギーの機序によつて発生するものであろうとした.Hill & Sulzbergerはアトピー性皮膚炎を乳児期,幼児期,成人期の3期に分けているが,本邦では乳児期のものに対してはアトピー性皮膚炎の名称を与えることに異論が多く,幼児期以降の身体屈面に特徴ある角化性苔癬化病巣を形成するものに対して,アトピー性皮膚炎と診断される場合が多い.しかしながらSulzbergerらが当初考えていたようなアトピー型アレルギーが湿疹群の成因に関与するという想定は,現今ではおおむね否定されつつある.Petersonらはagammaglobulinaemiaの患者にもアトピー性皮膚炎が少なからず発生したと述べ,Schnyderも吸入アレルゲンの皮内反応およびその家族歴から湿疹と呼吸器系アレルギー症候は分離できるとしている.これらの見解はアトピー性皮膚炎がアレルギー症状を合併しやすい事実があるにしても,アトピーなる名称を付し難い理由になつている.したがつてフランス,北欧ではアトピー性皮膚炎よりむしろprurigo Besnierが,またドイツではendogenes Ekzemやkonstitutionelle Neurodermatitisの名称が広く用いられている.本稿でも上述の理由により,原則としてprurigo Besnierの名称を用いた.Prurigo Besnierによくみられると記載されている毛孔性苔癬化丘疹が基本単位となり,これがときに集蔟性に存在し,局面性落屑性病巣を形成し,prurigo Besnierにみられる特徴的な屈面性苔癬化病巣を有さない疾患に対し,北村,高橋,笹川らは局面性苔癬状落屑性湿疹patchy pityriasiform lichenoid eczema(小児乾燥型湿疹-笹川5))と命名した.この小児乾燥型湿疹はprurigo Besnierに移行することが少なくなく,また喘息など
  • 村田 仁
    1969 年 79 巻 5 号 p. 358-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    薬剤が内服,吸入,噴霧,注射,軟膏と色々の経過で人体に摂取され,体内に入つて種々の障害を起すことがあることはよく知られている事実で,一般には薬疹,薬物性皮膚炎と呼ばれていることは周知の如くであり,皮膚科領域における所謂医療の作つた病気(iatrogenic disorders)の代表的なものである.この薬疹,薬物性皮膚炎の皮疹としては次のものが知られている.
  • 森安 昌治郎
    1969 年 79 巻 5 号 p. 380-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    人の皮膚結合織に存在するマスト細胞は,組織学的にはToluidine blueなどの塩基性色素によつてmetachromaticに染色される特殊顆粒の存在によつて同定される.近年,組織化学や酵素額の進展によりそれらの顆粒の性状がしだいに解明されるにいたり,この細胞の生理学的あるいは病理学的意義に関して多方面から注目がはらわれている.それとともにマスト細胞の電子顕微鏡レベルにおいても形態も明らかとなつてきた.さて,マスト細胞の細胞学において残された大きな問題の一つは顆粒形成の機転を解明することであろう.しかし,皮膚マスト細胞は特殊の例外をのぞけば分布がわずかで,また固定法上の難点などからこの方面の追求はほとんどなかつた.真皮結合織における多数のマスト細胞の浸潤を特徴とする色素性蕁麻疹において,その増殖は腫瘍性ではあるが,個々のマスト細胞は組織化学的にも微細構造上でも正常皮膚のそれとほとんど同一の性状を有している.
  • 川田 陽弘, 森 俊二, 林 懋
    1969 年 79 巻 5 号 p. 382-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    細網細胞,組織球は従来賛成色素の貪食,嗜銀線維との関係,更に超生体染色,最近では電子顕微鏡的方法で検討されてきている.一方酵素組織化学の進歩につれ,この種系統の細胞につき非特異エステラーゼをはじめ,各種の酵素組織化学的検索成績が諸家(Braunsteinら,細田,Lennertら,Mitusら,Dorfmanその他)により報告されている.皮膚科領域では,真皮における肉芽腫性病変がSteigleder-SchultisおよびWellsにより非特異エステラーゼ組織化学で検討されたが,皮膚のリンパ細網系腫瘍ならびに白血病についての検討の報告は極めて少ない.著者らはこれらの腫瘍につき非特異エステラーゼ組織化学の面から検索したので,これにつき報告する.
  • 1969 年 79 巻 5 号 p. 383-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
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