日本皮膚科学会雑誌
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皮膚疾患と糖尿病 Ⅰ.臨床的観察
水野 勝
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ジャーナル 認証あり

1970 年 80 巻 7 号 p. 466-

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抄録

皮膚疾患を全身性疾患の皮膚表現とみなし,その原因を追求しようとする考え方が最近の皮膚科学の傾向である.糖代謝と皮膚疾患との関係についても古くから論じられており,実際多くの皮膚疾患がいろいろな代謝性疾患の経過中にあらわれてくるが,糖尿病におけるほど皮膚随伴症状が多い疾患は他に例をみない.糖代謝と皮膚変化についてはすでに多くの研究があり,Ottenstein,辻らの空腹時血糖を問題としたものから,菊地による静脈内ブドー糖負荷試験,秋山によるブドー糖2重負荷試験,大森,安田による膿皮症と糖代謝の関係が追求されている.以上は皮膚疾患患者の糖代謝について言及したものであるが,逆にGreenwoodは500人の糖尿病患者についてその皮膚病変を観察している.同様に糖尿病患者の皮膚に関してはHoppe,Joslinらの報告もある.さらになぜ高血糖患者に皮膚疾患を多く合併するかということについて理論的に言及したものも多くある.Urbachによれば皮膚随伴症状は過血糖からおこる「皮膚糖」の増加した結果であろうとし,さらに血糖値正常でも皮膚糖の上昇している場合があり,これを“skin diabetes”とよんだ,高血糖により他の代謝産物を生じ,そのために組織に変化を生じるから皮膚疾患を生じやすくなるというものもある.Blochによれば組織の糖含有量の増加が皮膚症状をひきおこすのではなく,中間の代謝産物が皮膚感受性を変化させ,そのために内因性,外因性の刺激に対する感受性が高まつて皮膚症状がおこりやすくなるという.皮膚の変化自体が逆に糖代謝障害をひきおこすこともあるという.また,高血糖のさいの血管障害も皮膚変化になんらかの役割を演んじているという.このように糖代謝と皮膚疾患に関しては多くの報告があり,密接な関係にあるにもかかわらず,その関係については未解決といわねばならない.本研究は糖代謝と皮膚病変との関係について多少でも明らかにすべく「皮膚疾患患者の尿糖検査」,「皮膚疾患患者の糖負荷試験」「糖尿病患者にみられた皮膚病変」,「糖尿病患者の爪床毛細血管像」について観察し,検討した.

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