日本皮膚科学会雑誌
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81 巻, 6 号
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  • 西部 武嗣
    1971 年 81 巻 6 号 p. 451-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    疣贅様表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis,Lewandowsky-Lutz)と扁平疣贅(verruca plana)は臨床的にも組織学的にも類似点が多く,両者の異同については従来議論が多い.ところが最近,Jablonskaほかにより疣贅様表皮発育異常症における人体接種実験の成功が報じられ,また,本症皮疹におけるウイルスの存在の電顕的証明の記録も出てきた.これらを根拠にして,本症を扁平疣贅の一特異型と見做す考え方が有力になりつつある.他方,扁平疣贅も尋常性疣贅(verruca vulgaris)も同一のウイルスに因つて生ずるといわれているが,皮疹の形態には異なるものがある.著者は,これら類似の3疾患の皮疹を電子顕微鏡的に比較研究し,それらの異同を微細構造の面から解明しようと試みた.以下にその成績を述べる.
  • 藤田 優, 麻生 和雄, R.K. Freinkel
    1971 年 81 巻 6 号 p. 473-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    Kooymanは角層に移行するにしたがい,エステル量が増加し,遊離コレステロールが減少すると報告し,SwanbeckはX線回析で正常のヒト角層では250Åの蛋白線維が80Åの脂質膜によつてかこまれているが,異常角化ではこの脂質膜に変化がおこることを報告し,さらにコレステロール生合成阻害剤MER-29(Triparanol)が人で異常な角質形成,すなわち,魚鱗癬様皮膚炎,脱毛を生ずると報告された.これらのことからRothmanはコレステロールおよびそのエステル化が角質形成と重要な関係を有するとのべている.さらにGara,Rothman,Lorinczは正常人と乾癬患者の背中に14C-パルミチン酸エーテル溶液を塗布し,2.5時間後に綿球でふきとり,14C-パルミチン酸コレステロールエステルを抽出,測定し,正常人では平均4.9%回収しえたが,乾癬患者では平均0.2%しか回収しえなかつた.この結果からLorinczは異常角化は充分なコレステロールエステルが存在しないためにおこるもので,乾癬においてはこのコレステロールエステル化の不足は優性遺伝によるらしいとのべている.しかしながら,皮表のリピドフィルムのエステル化のみから表皮の角化について議論をすすめてよいか疑問である.麻生らは表皮でコレステロールが酵素的にエステル化されることをあきらかにし,表皮可溶性画分やミトコンドリアでの本酵素の局在,補酵素の要求性,またp-chloromercuribenzoic acidによる阻害ならびにglutathioneによる回復などの成績から,CoA,ATPの働きで長鎖(主としてオレイン酸)のfatty acyl-CoAが生成され,これがtransferaseの作用でコレステロールのエステル化に働くことを報告した.さらに表皮において,コレステロールエステルを加水分解し,コレステロールを遊離する酵素の存在を報告した.本酵素は表皮可溶性画分にあり,コリンエステラーゼ,non-specific esteraseと異なつたspecificな酵素で,補酵素としてATP,CoAを必要としなかつた.以上のような知見のうえにたつて,乾癬表皮のコレステロールエステル化をあらためて検討し,その成績の概要を報告する.
  • 麻生 和雄, 藤田 優, 岡崎 忠靖, 加藤 友衛
    1971 年 81 巻 6 号 p. 479-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    著者らは表皮での最も脂質の主要な合成系は表皮細胞可溶性画分にあり,ここでアセチールCoAからパルミチン酸C16:0の合成のおこなわれていることをたしかめた.この反応は図1のごとく二つの段階でおこなわれている.第1段階はアセチールCoAが炭酸を固定してマロニールCoAとなるもので,これはアセチールCoAカルボキシラーゼによつておこなわれる.第2の反応はLynenのmultienzymeによるもので,マロニールCoAの7分子がパルミチン酸に生成され,このとき14分子のNADPHを必要とする(以下第2の反応をmalonyl CoA pathwayという).アセチールCoAとマロニールCoAの縮合によってアセトアセチールCoAが生ずるが,このアセトアセチールCoAのCO基がNADPHのH+により影響をうけると図1のように脂肪酸生成へ(malonyl CoA pathway),アセチールCoAの-SH基によつて攻撃されるときは,生成はコレステロール合成に傾くと考えられている.放射性基質をもちいた乾癬表皮の脂質生合成についてはすでにHerdenstamおよび大城戸らの報告があるが,著者らは以上の知見の上にたつて,乾癬表皮の脂質生合成を,とくに1)アセチールCoAカルボキシラーゼや2)Lynenの脂肪酸合成multienzymeから再検討したいと考えた.成績の概要を報告したい.
  • 佐藤 壮彦
    1971 年 81 巻 6 号 p. 488-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    周知の如く哺乳動物の上皮には,基底層にあつてdopa染色で染め出されるメラノサイトと,それより高位にあつて鍍金法あるいはadenosine triphosphatase(以下ATPaseと略)染色で染め出されるランゲルハンス細胞との2つの樹枝状細胞が存在する.この両者の関係については,以前は後者はeffete melanocyteとする考えもあつたが,最近はむしろ両者はそれぞれ全く別の系列に属するものとする考え方が一般に受け入れられている.しかし後者の持つ機能については今日なお充分解明されるに至つていない.またReynolds(1954)はマウスの上皮に超生体染色で樹枝状細胞を証明し,これをamelanotic melanocyteと考えており,JarrettおよびRiley(1963)はマウスの尾部に,さらにRiley,伊藤らはマウスの背部上皮に非特異的エステラーゼ陽性樹枝状細胞を見出している.なお,また電子顕微鏡的検索では,吾々はhairless mouse背部上皮にメラノサイトあるいはランゲルハンス細胞のいずれにも属さない,いわゆるindeterminate cellの存在することを観察している.これらの種々の方法で観察される上皮樹枝状細胞相互の関連および異同,あるいはそれぞれの持つ機能については,なお解明されるべき点が多く残されている.hairless mouseは元来四肢末端,耳朶等には色素を有するが,躯幹皮膚は色素を欠き,活性メラノサイトを持たない.しかしながらKlausおよびWinkelmannはdimethylbenzanthracene(DMBA)塗布により,Epsteinら,Quevedoら並びに吾々は紫外線照射により速やかに色素沈着の生ずることを観察した.この際これらの上皮樹枝状細胞がどのような動き方をするかは,上記の問題の解明に資するところが大きいと考えられる.そこで著者はhairless mouseの背部皮膚に紫外線を照射した際の色素の出現の経過を詳細に観察するとともに,その間のメラノサイト,ATPase陽性樹枝状細胞,非特異的エステラーゼ陽性細胞の数的消長,形態的変化等について追求し,これらの関連について考察を加えようと試みた.
  • 中条 知孝
    1971 年 81 巻 6 号 p. 498-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    皮膚の細菌感染症に主役を演ずる細菌は,多くの場合ブドウ球菌であり,その一次感染症の原因菌の多くは黄色ブドウ球菌である.その他,皮膚疾患における二次感染をも含めて,白色ブドウ球菌(表皮性ブドウ球菌)もかなりの頻度に分離され,その病原性の有無に関して,あらためて関心が払われるに至つた.一方,この表皮性ブドウ球菌は健常人の皮膚表面に恒常的に分布している常在細菌叢の主体をなし,皮膚の自浄作用や生理機能に大きな役割を演じていると見なされている.ブドウ球菌属はcoagulase産生能およびmannit分解能の有無によりStaphylococcus aureus,Staphylococcus epidermidisに分けられる.さらに近時Deoxyribonuclease(DNase)産生能を有する菌株に強い毒性が認められ,かつその多くはcoagulase陽性株に一致することから,DNase産生の有無が重視されている.ときにはcoagulase陰性でDNase陽性株に強い毒性が認められた場合もある.それ故臨床的には,ブドウ球菌属をば強い毒力ないし病原性を示す黄色ブドウ球菌と弱い毒力ないし弱病原性を示す表皮性ブドウ球菌とに大ざつぱに分けることが妥当と考えられる.さきに気象と皮膚感染症に関する研究班が組織され,気象因子と皮膚感染症の関連についての究明が企てられた.その一環として,皮膚感染症に重要な位置を占めるブドウ球菌の皮膚表面における季節的変動を把握する意味から,著者は一家族を被検対象として本菌の健常皮膚表面における数的動態を2年有余にわたつて測定し,気象条件との関連を検討した.以下にその成績を記したい.
  • 中条 知孝
    1971 年 81 巻 6 号 p. 507-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    皮表pHの測定はMarchionini(1928)に始まり,彼はその研究を総括して“Sauremantel”なる言葉を提唱した.もつとも,その後皮表pHはMarchioniniの測定値よりは高いとされ,例えば,BlankはpH4.0~7.0の数値を挙げ,大多数は4.2~5.6の間にあると報じ,かつまたSauremantelの意義についても批判的な論調がふえて来た.著者は,第1編に記した皮膚表在ブドウ球菌と気象との関係を検索した実験の際,ブドウ球菌数の測定と同時に皮表pHを測定したので,両者の関係を検討し,あわせて同時に行なつたブドウ球菌の増殖とpHの関係の実験成績を下記する.
  • 石川 英一, 森 俊二, 鎌倉 和江, 川村 太郎
    1971 年 81 巻 6 号 p. 514-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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    近時皮膚のムコ多糖類に対する関心が強まつているが,皮膚科領域での尿中ムコ多糖類に関する研究は極く少数しかない.本論文では,原理的に組織化学に応用し得る方法,すなわち四価アンモニウム塩と結合させた酸性ムコ多糖類(AMPS)を,各種濃度の食塩水で分画抽出する方法を用い,尿中酸性ムコ多糖類を測定した.実際には検体尿50~100mlを約1/10に濃縮し,これに1%セチルトリメチルアンモニウムクロライド入りフォルマリン・アルコール液を4倍量加えてAMPSを沈殿させ,遠沈した沈渣に1規定食塩水を10mlを加えてAMPSを抽出し,その沈渣からさらに今度は2規定の食塩水で抽出を行なう.このそれぞれの抽出液に4倍量のアルコールを加えて,その遠心沈渣を1.5mlの蒸溜水に溶かす.こうして得たAMPS分画抽出液は,セルローズアセテート膜を使い,pH8.6ベロナール緩衝液若しくはpH2.8塩化リチウム液での電気泳動を行ない,pH2.5アルシアンブルー液で染色,検定するとともに,さらにコンドロイチン硫酸分画(後述)についてはデンシトメーターにかけて半定量的測定を行なつた.
  • 1971 年 81 巻 6 号 p. 515-
    発行日: 1971年
    公開日: 2014/08/26
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