日本皮膚科学会雑誌
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実験的接触皮膚腺の研究 一次刺激性接触皮膚炎の血管透過性因子について
卜部 康道
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1973 年 83 巻 1 号 p. 25-

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抄録

モルモットに20%クロトン油一次刺激性皮膚炎をおこし,その最盛期である8時間前後の炎症皮膚より血管透過性因子の抽出を試みた.その方法は炎症皮膚を採取後直ちに凍結して細片とし,アセトンにより処理した.その皮膚細片よりの滲出液をSephadex G50,G25およびDowex 50 WX2カラムを用いて分解することにより9個に分けえた.このうち一番目のもの(A)および二番目のもの(B)にin vivoで活性物質の存在するのを確かめた.さらに,これらA,Bを薄層クロマトグラフィーにより電気泳動的に処理したところ,Aは4個,(A-1,2,3,4,),Bは2個(B-1,2)の等電点の異なるものに分離しえた.これらのそれぞれについて透過性の強度,速度,稀釈による影響,ラット腸間膜の肥満細胞に対する態度,抗ヒスタミン剤あるいは熱により影響されるか否かについて調べた.その結果,A-1は透過性がもっとも強く,色素の透過がもっとも早く,肥満細胞に強く脱顆粒現象をおこさせた.A-2は透過性はあまり強くないが色素の透過が早く,かつ,肥満細胞の脱顆粒現象も割に強くおこさせた.A-3は透過性はA-2とほとんど変らないがその発現が遅く,肥満細胞の脱顆粒現象も強くおこしえなかった.A-4は色素透過が強くみられたが発現がおそく,肥満細胞に対しては全く脱顆粒をおこしていなかった.B-1は同様に色素の透過は中等度で,その発現は早いが肥満細胞に対しては全く脱顆粒をおこさなかった.なお,稀釈によりもっとも強く透過性の減弱を示した.B-2は色素透過性は同様に中等度であるがその発現は遅く,肥満細胞に全く影響をおよぼさなかった.なお,以上のすべてが抗ヒスタミン剤により約50%抑制されたが,60℃,30分の加温による影響は全くみられなかった.以上よりこれら物質はヒスタミン遊離物質,あるいはこれに類するものと思われた.つぎに,6個の因子と家兎クロトン油皮膚炎から,また,DNCBによるモルモットアレルギー性皮膚炎から同じ方法でえられたものについて比較検討した.さらに,現在まで報告されているペプタイド性の血管透過性因子,および皮膚からえられた血管透過性因子について,多少の文献的考察をおこなった.

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© 1973 日本皮膚科学会
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