東大本院皮膚科でみられた症例を主とした過去21年間の基底細胞上皮腫124例,有棘細胞癌127例,過去17年間の悪性黒色腫38例を基に,主として予後の面より統計的観察を行なった(予後を追求できた症例は基底細胞上皮腫101例,有棘細胞癌93例,悪性黒色腫34例).各疾患につき,性,年令,発生部位,発生母地,発病から初診迄の期間について述べ,これらと予後との関係について触れた.予後に関していえば,基底細胞上皮腫では原病死例がなかったため,生命に関する予後は極めて良いと考えられるが,有棘細胞癌と悪性黒色腫では,TNMで表わされる進行度によって分類すると,(1)治癒せしめうるグループ,(2)警戒すべき予後のグループ,(3)絶望的予後のグループの3者を明快に区分することができた.又,既治療例の予後は新鮮例のそれよりも悪く,最初の治療の成否も予後を大きく左右するのではないかと考える.