日本皮膚科学会雑誌
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特異な毛包腫瘍
荒田 次郎
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1975 年 85 巻 1 号 p. 19-

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抄録

自験の腫瘍は,臨床的に,左膝蓋部の皮下に限局して生じた結節の集談よりなり,組織学的に,極めて緊密な stromal-epithelialrelationship を示して増殖している良性腫瘍で,毛組織への分化過程の全ての変化を示している.その分化の各段階で挫折して,基底細胞腫様,Trichoepithelioma 様, Tumor of follicularinfundibulum 様, Trichofolliculoma 様の像を取りつつも,確実に毛組織へ分化し,毛を形成している.本腫瘍の発生母地としては,毛母が考え易く,その発生過程については,Headingtonらが,彼らのいう Trichogenic adnexal tumor (以下 T.A.T.) において主張している概念,すなわち,stromal-epithelialrelationship によって腫瘍の形態分化が誘導されたという考え方にしたがうのが説明し易いと思われる.自験の腫瘍は, T.A.T. よりも複雑な組織構造を示している点で注目され,両者を同一のものとすることはできないが,発生基盤には共通するものがあると推定される.毛包腫瘍の分類上,貴重な材料を提供するものと思われる. 毛組織への分化を示す腫瘍あるいは毛組織に由来する腫瘍の分類については,その分化の程度,その推定される起原,悪性度の程度により,多くの試みがなされている1)-4)しかし,その各要素が複雑に絡み合りため,系統的な分類がむずかしい. われわれは,このような腫瘍の分類上興味ある問題を投げかけると思われる症例を経験したので, 2, 3の検討を加えて報告する.

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© 1975 日本皮膚科学会
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